睡魔とMRIと自作絵画

 少し前のこと、川喜多映画記念館にアレクサンドル・ソクーロフ監督の「エルミタージュ幻想」を観に行きました。 
 日本の映画界に貢献した川喜多長政・かしこ夫妻の旧宅跡をこじんまりした映画館に改装し、比較的まだ新しい建物なのですが、ごちゃごちゃした観光地にあって数少ない文化の発信源になっています。
 洋画・邦画問わず名画と評価された過去の作品を提供している。1月には「アラビアのロレンス」や「ルートヴィヒ」も上映される予定。
 それで「エルミタージュ幻想」なのですが鑑賞するチャンスを逃していて、NHKで放送された記憶はあるけれど、スケールの大きな作品なので映画館でなければまるで意味がないと考えていました。
 https://www.youtube.com/watch?v=LYIuuQkpnuc  当時の宣伝動画。ゲルギエフ特別出演なのですが、舞踏会のシーンでマリンスキーオケを使い演奏する箇所でほんの少しだけ登場。
 キャストとスタッフ合わせて2000人以上。HDを使用して全編ワンカット撮影という異常な作品で、日本の編集だらけのそれと比較するのもおこがましい。
 ただ当日朝から嫌な予感がしていて、アレルギー薬と精神薬の相性が悪く、突然意識を失うように寝てしまう気配を感じていた。というのもその前日コンビニまで自転車を走らせていたら、直線道路なのに民家の壁にぶつかったり、お婆さんを轢きそうになったり明らかに身体の異常を感じていたから。他には最近極端に地図を読むことが苦手になってきている。
 その精神状態が上映前に突然やってきて、結果として2~3度目覚めたものの、最初から最後まで眠り続ける失態をやらかしてしまった。


 数日後、市内の総合病院で健康診断。(このことは以前少し書きましたね。)内科医曰く「てんかんの疑いがある。脳波をどこかではかった方がいい。」これにはさすがに驚きました。てんかんといっても急に倒れて痙攣だけではなく、様々な種類があるらしい。
 横浜に評価の高い病院があると言われ「紹介状書きましょうか?」・・「冷静な返答ができないので考えてから決めます。」と返答。
 その横浜の病院はやけに面倒な場所で億劫な気分。そこで市内で脳外科を検索すればフィリップス社製の最新装置がある病院を発見。
 翌週いつもの精神科医師に相談。「困りましたね。でもそんなふうに感じたことなかったよ。健康診断でただの内科医に言われたことでしょう?たぶん違うな。」
 結論としてやはり横浜は面倒だし身体に良くないと判断。近くの脳外科に出掛けた。
 受付に事情を説明して待っていると看護師さんに呼ばれ、何故か血圧を測るという。そしたら上が108とやけに低い。その後院長先生に呼ばれ「で、状況を簡単に説明して。」とぶっきらぼうな態度。カチンときたが我慢して説明すれば、「実は先日検査技師が辞めてしまい脳波の検査ができないんですよ。」・・なんだそれ!「だったらHPに書いておけ!」と喧嘩になりそうになった。
 しばし話し合い「無料で紹介状書いてもいいけれど。横浜に評価の高い病院があるんで。」とどっかで聴いた事があるような言葉。つまり同じ病院。
 「じゃあ、今日は何もせず帰れという意味ですか。」・・「MRIだったら脳の状態はわかるけれど、15分程度かかります。でも脳波は無理です。でも健康診断で素人の内科医に言われたことでしょう?でもそんなふうに感じないな。」と、これまたどこかで聞いたような言葉。
 「ところで閉所恐怖症?それと耳はかなり敏感な体質?」・・「閉所でパニック障害になったことがあります。耳は普通の人よりかなり敏感だと思います。」・・「じゃ、駄目だ。」
 しかし何もしないで帰宅したくないので「MRI受けさせていただきます。」・・「じゃあ自己責任ということなら。」・・「馬鹿言わないください。病院で具合悪くなったらあんたの責任に決まっているだろ。」
 最早診察室は喧嘩状態。隣にいた看護師さんの表情がこわばっている。
 数分後、僕はフィリップス社製の機械の前で検査技師さんからやけに丁寧な説明を受けていた。危険な人と連絡があったのでしょう。
 「かなり強い金属音がしますのでヘッドホンを装着してください。綺麗な旋律の音楽が流れています。ただし工事現場のような金属音の方が大きいですから、BGMはあまり意味がないとお感じになるかもしれません。それでも効果はありますから。」そして身体を固定され機械内部に監禁された。
 まず綺麗なBGMが流れてきましたが、ポール・モーリアみたいで驚愕。こんなの長時間聴かされていたら嘔吐するかもしれない。「では始めます。」
 ガンガンキンキンの巨大な音。心の中で「クセナキスみたいだな。」時々音が反復「スティーブ・ライヒみたいだな。」と徐々に雑音が快楽に変貌してきた。こりゃ素晴らしい。ただし音の隙間からPモーリアは恐ろしい。
 眠りそうになるほど気持ちの良い時間だった。
 診察室に戻り、脳の画像を見ながら説明を受けた。「非常に美しく理想的な形状。血管にも全く問題ありません。素晴らしい脳です。」
 自分の脳を初めてまじまじと観察して「俺も普通の人間なんだな。」と思った。
 CDに画像をダビングしていただき帰宅。とりあえず来週精神科なのでCD持参で訪問予定です。
 脳画像を添付しようと思ったが、誰も興味ないだろうからやめます。


 話は戻り映画館。ロビーにポスターや写真の展示が沢山あってとても面白い。
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 川喜多夫人の隣にジャン・コクトー
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 なんとマリア・カラスヴィスコンティ。あとから気がついたのは2人の間の横顔男性はフランココレルリ?いやエットレ・バスティアニーニかな。
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 所有している本でカラスと3人の写真があったので比較してみたが、バスティアニーニのような気がしてきた。
 この時のオペラは「ポリウート」だと思いますが、ヴィスコンティの映画そのもののような主役たち。
 こんな時代があったのだな。


 最後に僕の絵画を一枚。キャンバスにアクリル絵具。タイトルは「蝋燭」。イメージ 4