レコード8 グルダ「アリア」


 aria
 
 フリードリッヒ・グルダ「アリア」 日本公演のアンコールで演奏された時のもの。
 一時期ジャズを覚えようと数枚のレコードを買ったのですが、どうしても好きになれないままお仕舞いになってしまった。
 そんな中時々聴きたくなるのがグルダである。(正確には「アリア」だけが大切で残りはオマケみたいなもの。)
 もっともこの人は私にとってクラシックの演奏家なのですから、多少の親近感があって、ジャズを覚える意識で購入したレコードとは種類が異なる感覚。
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 一度無理してジャズの名曲喫茶に入ったことがあって、
 「好きなレコード掛けますから、リクエストしてください。」と店主が言うもんだから、知識が無いとも伝えづらくて、少し考えて
 「プレヴィンが聴きたいのですが。」と答えた。
 「了解。マイ フェア レディでいいよね。」
 「お願いします。」
 ピアノトリオでのプレヴィンの「マイ フェア レディ」は良かったのですが、狭い店で店主とコミュニケーションをとらなければならなくて、それにジャズの知識が最初から要求されている感じが心地悪かった。
 珈琲の味は不味くはないけれど、細かく記憶していない。
 あれは横浜のJR桜木町から裏通りを京急の日の出町駅に向かって数分歩いて右手にあるカフェで、目印としては向かいに白い壁の風変わりな「キリスト教的」な喫茶店があるから分かりやすい。
 キリスト教カフェは謎である。
 ショーウインドウにクリスチャン的なグッズやお言葉が飾られていて、店の中を覗いても誰かお客がいたことは一度もない。
 その辺りは夜にもなれば飲屋や風俗店が乱立していて、おしゃれな「みなとみらい」と間逆な裏の世界なのですが、後からできたのが「みなとみらい」なのですから本当の裏はあちらともいえるのではなかろうか。
 もう何年も前ですがその通りのバーに入ってみたら凄いバーテンダーがいて、フレッシュのスイカソルティ・ドッグを作ってくれた。
 その昔ニューオータニに勤務していた人らしい。
 彼のお酒を求めて今夜も常連客が、1時30分、まだ飲んでいるだろうな。
 話がグルダから脱線しましたが、きっとあの頃に買ったレコードで、裏通りを歩いていると「アリア」の暖かくも悲しげな旋律を思い出すのです。
 ほんの数分の音楽の中に、希望、孤独、思い出、生と死、が網羅されているように感じられる。