チケット騒動に終止符。ミューズは微笑んだ。

 裏庭に菜の花が咲いている。今日みたいな日のことを菜種梅雨といふのだな。
 先日、ミラノスカラ座のE・F券先行抽選予約なるものがあり当たりっこないと思いつつ、とりあえず申し込んでみた。
 ちなみにEが19,000円でFが13,000円。(狙いはリゴレットだ。)
 抽選のような話には縁遠い立場とつくづく感じるのは、この前も仕事の取引先パーティで150人位列席の中、全員に当たるビンゴゲームがあって、1位がウエッジウッドのティーカップ&ソーサーセットだったから会費が回収できると気合を入れたのだけれど、これほどまでに上手く当たらないカードも珍しいとしか考えられないのは、あちこちがリーチ状態なのに全てが外れていくありさま。結果もの凄い低い確率でビリで、商品を取りに行くのが恥ずかしかったけれど、チョコレートをもらった。
 そんな自分にスカラ座のチケットが当たるはずもなく、その予定のまま「ご用意ができませんでした。」というメールが受信されていた。
 しかし、そんなこともあろうかと昨年からピンク豚の貯金箱に500円玉貯金をしていたから、「62,000円のS席買ってやる!」と今振り返ればヤケクソな脳の思考になりかかっていた自分が恐ろしい。
 ところが、今回はミューズが微笑んだのだ。それは友人からの一通のメールで、その友人の友人が行けなさそうな日の分も(平日マチネのリゴレットF券)当たったから買ってくれる人を探しているとの内容で、驚きつつも「買います
 人生って素晴らしいし、アリアを聴いたときみたいなオペラ的な喜びを感じてしまった。
 本当はモシュクがジルダを歌う初日が第一希望だったのだけれど、ヌッチが聴けるのだからこれ以上ありがたい話はない。
 心から感謝の気持ちでいっぱいになりました。
 ありがとうございます。
 
 翌日朝10時からE・F席の発売。
 安心感からかアホな私はミューズの存在を信じ、別の言い方するなら欲望に火がついてしまい、「ファルスタッフの舞台でバルバラが待っている。願わくば初日のリゴレットも・・」右手にマウス、左手に携帯電話。9時57分にはワンクリックで獲得できる態勢を整えていた。ここでいうバルバラとはフリットリのことである。
 しかしこれが全く通じない。その気配すらないのは、さすがミラノスカラ座である。
 長年、音楽を愛好している経験上、ベルリンフィルウィーンフィルスカラ座とメトロポリタンオペラは特にアクセスが集中するのか、だいたい同じような状況に陥る。
 思えばその昔、野村證券がスポンサーになったクライバーウィーンフィルの発売日に一回で電話が通じ、一番安い席を速攻で予約できたことがあった。
 まさに奇跡を獲得したような気分だったのに、電話の向こうのオペレーターは「あのう・・ステージ後のP席なのですが大丈夫でしょうか?」と意味不明な発言。
 しかし喜びもつかのま、クライバーは予定どおりキャンセルした。
 この体験もどことなくオペラ的な気分だったと記憶していて、気のせいかもしれないけれど絶対に聴けないと思っていたその後の薔薇に繋がった手続きのような感覚。
 
 リゴレットといえば、かつてムーティが同じプロダクションで来日公演を行い、確かガザーレが初めて日本で歌ったとき?だったか、E券が20,000円以上したような話を昨夜友人から電話で聞き、「そうでしたっけ?じゃあ今回はお得なんじゃないの。」
 オペラの恐ろしさは金銭感覚が麻痺する部分にあって、NBSのHPばかり見ていたからか、今月のフェニーチェや11月のトリノが安く感じられてきたのだから冷静にならなければいけない。
 唯一腹立たしいのは、抽選予約発表と同時にオークションにチケットが流出する現実があり、しかも同じ人が何枚も出品しているのだから奇妙な気分なのは、ビジネスのシステムが確立しているような気がしなくもない。
 需要と供給があるのだからいいけれど、リゴレット初日のF券を何人かが競い合って20,000円以上の高値がついていた。個人的な思いだけれど、こういうのはとてもオペラ的とはいえない。
 ジークフリート第2幕のように小鳥が鳴き始めました。
 雨が止みそうです。