桃源郷を求めて山を歩く

 今月23日に鎌倉花火大会が行われる。
 昨年は長谷の海岸で観た。家から15分程度で海岸に到着できるのだけれど、帰りが前に進めないくらい大変で約1時間掛かって帰宅したのをおぼえている。
 そこで私は「どこかに穴場スポットがあるに違いない。」と考え、Googleマップで近所の高台を探したら、自宅の裏山頂上付近が公園のような広場みたいで、航空写真では高低差が曖昧だけれど、地形の理屈からいって海岸が見えそうな場所であることを発見した。「もしかしたら、歩いて行ける桃源郷かもしれない。」と勝手に想像。
 そういえば近所に雑草だらけの奇怪な石の階段があって「関係者以外通行不可」のような看板が置かれていて、いつも「上には何があるのだろう?」と思っていたが、どうやら階段を登りきって数十メートルの木々を掻き分け進んでみれば、広場に辿り着くように写真では見える。
 そんなことから大仏側から山を登り、広場で休憩しながら海が見えるか確認して、森を抜け階段を下りて、自宅に戻れるか確認してみようと考えた。実に暇な月曜日である。
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 トンネルを通過し脇にある階段を登る。ここは落石の危険性があるとかで通行禁止になっている大仏切り通しに繋がっているが、今回の目的はトンネルの上を通過し頂上目指してただ歩くだけ。急な登りで、どこにいるのか直ぐ近くで鶯が鳴き、蛇やら狸が出てきそうな雰囲気。
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 暫くして登ってきた方向を振り向いてみたら、驚いたことに緑だらけの山の風景で大まかには大仏様に向かって左後方の山から下界を見下ろしている感じなのですが、この写真だけだと鎌倉なのかどこだか分からないし、きっと数百年間変化しないでそのまんま、馬上の頼朝も同じような景色を眺めたのではないかしらん。
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 そういえば昨日ルツェルン祝祭管弦楽団の一般発売だったのでダメモトでローソンチケットに電話してみたら2回目で簡単に繋がった。ところが既にC席もD席も無くなっていて、1回で繋がらないと駄目なのかなとがっかりしたけれど「もしかしたらキープだけして直ぐに申し込みしない人がいるかもしれない。」と可笑しなプラス思考がはたらき、電車の中から携帯使って「ローソン」「ぴあ」「イープラス」の順番で空席のチェックを続けた。そしたら10時35分に唐突にC席の空きが出現したのでそのまま急いでアクセス。10月15日のシューベルト「未完成」ブルックナー9番サントリーRAを購入した。一瞬安い買物ができた気持ちになったのですが、実情としては25,000円。しかし今回のルツェルンは何故か歴史的な演奏会になる予感がする。そして今年はベルリンとウィーンとサイトウキネンには縁がなかったのだろう。ちなみにイープラスで予約ができた。
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 辿り着いた頂上にいきなりこんな看板。なんだろう?
 下は航空写真で確認できた公園。何のためのベンチなのか意味不明。
 柵の向こう側が僕が休憩する予定にしていた桃源郷なのですが、入口には鍵が掛かっているし、だいたい柵が高すぎて進入できない構造になっている。木々の奥を突き進んで山を下りれば自宅近辺だと思うけれど、どうにもこうにも先に行けない。
 吉行淳之介の小説だとこの辺で幸薄そうな美女が登場する。
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 そして海岸問題ですが、悲しいかな「全然見えない。」
 しばらくなにもしないでベンチに座ったり意味もなくテーブルの上に立ったりしていたが、仕方がないので歩き始めた。でも蛇の出そうな山道はもう嫌だから反対側の道を進んだ。
 もしかしたら自分は幽霊の出そうなもの凄い不便な田舎に我慢しながら住んでいて、というのもトンネル出てから誰も通行人がいないのは「意味のある現象かもしれない」とか、暑いとお馬鹿なことばかり考えてしまう。
 頭の中ではマーラー7番の終楽章がけたたましく鳴りはじめ、そのリズムに合わせて軽快に坂道を下りた。
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 途中誰もいない廃墟と化した大きな家が数件。空地に「セール」の文字。左側の壁面は無数のやぐらばかりだから夜だと怖い場所だろう。
 もし宝くじが当たったら、ここにお客の来ないような名曲喫茶を作って奥の部屋にカンディスキーの「渓谷」を飾って誰にも見せない。
 入口に赤い字で「カラヤンお断り」
 メニューに「身体に塩とバターを塗ってください」
 夢なくして生きることはできない。
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 ※道はだんだん平らになり古い平屋にサーフボード。正面に小学校が現れ体育館の中でボール遊びをしている童達。
 辿り着いた場所は江ノ電極楽寺駅。山全体の地形を理解した。枯れはじめた紫陽花。小泉今日子さんはいない。
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 駅の近くのパン屋でクリームパンを購入。自家製のカスタードクリーム、だと思う。食べながら歩くと美味しい。
 成就院を横目に由比ガ浜に向かう。
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 土曜日の仕事帰りに吉田先生の「名曲のたのしみ 第2巻 指揮者を語る」を購入した。
 前回のピアニスト編では、如何にもお喋りしたものを読んだ印象が大きかったのだけれど、今回は純粋に読みものの世界に導かれた。3度は読み直したかな。付録のCDはまだこれから。
 汗だくだったのでカフェでアイス珈琲を注文した。
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 観音様と大仏様の前を通過しトンネルまで戻ってきた。さっき歩いた階段。
 あの上の家良いなと思った。日野啓三さんの小説みたいな病弱な美しい少女が住んでいるとか勝手に想像。
 頭の中では「アラベラ」終幕の二重唱。泉で汲んできたグラスをマンドリカが叩き割るシーン。