春の香り
春一番があったという。
夜のニュースまで気がつかなかったのは自宅周辺に殆ど風がなかったから。ただ今年初めて鶯の囀りで目覚めた。まだ上手な鳴声ではなく中途半端な発声練習が心地良い。
自宅裏は県の保護樹林。獣たちには格好の住処になっているのか時々四足動物的な遠吠えも聞こえてくる。
この時期、毎年のようにうっかりしてしまうのはフキノトウのタイミング。
近所を散歩していたらどれもこれも成長してしまい食べられるものは一つしか発見できなかった。(でもその美味しかったこと。)仕方がないのでノビルを少し収穫して帰宅。強烈な匂いはニンニク以上なのか部屋の空気清浄機が勝手に動き始めた。暫く人に会わずにいられるから、どのようにして食べようか思考。
定番はお味噌をつけてそのまま食すものでしょうが、いかにも芸がない。冷蔵庫を開けると冷凍にしたままの鰯と秋刀魚があったので、オリーブオイルでサーディンにして春の香りと組み合わせた。なかなかの美味。
BGMはブラームスの歌曲。
(収穫直後)
先日発覚した血糖値問題の食生活改善は始めてしまえばどうってことないもんで、今日で10日目だから既に学習してしまった感じがしている。ようは糖質の取りすぎに注意しながら動けばいいだけの話。例えば3つ先のバス停まで歩くとか駅のエスカレーターを使わない。昨日は大仏切道しを歩いてきた。明日はオフになったので土筆を収穫する予定。不思議なもので徐々にだけれど身体が行動を欲してくる。
(洗浄直後)
暫く珈琲を飲まないでいた。
日曜日だったかいつもの豆屋オーナーからメールがあって「今夜TBSに伊集院静氏が出るから見ろ!」のような失敬な内容で「血糖値問題で死にそうだからマンデリンとブラジルをお見舞いに持って来い。」と返信した。
そしたら「却下」と着たから、あの店ではもう買わないぞと思いつつ、彼はいい仕事しているし珈琲禁断症状が起因して店を訪ねた。
豆「昨日取材が来た。」
堀「雑誌?」
豆「BS」
堀「テレビとは馬鹿らしい。」
豆「やっぱり、そう言われると思った。」
堀「だって今までそういうの断っていたのに、どういう心境の変化?」
豆「恥ずかしくて親にも言っていない。」
理由は、なんでも豆を卸している喫茶店がBSの取材を断り、変わった雰囲気の焙煎屋がいるからそこに行きなさいと電話があったらしく、嫌々ながら受けたらしい。
それで記者から「どういうお客様が常連なのですか?」と質問され
「生き方に拘りを持った人たちばかりで、たとえ生産性のない不器用な生活様式であっても、このコンセントでなければならないとか、新潮を読んではいけない。岩波です。LEDは駄目、白熱灯でなければ。」とか理解不能意味不明の回答をしたらしい。
豆「今日のお勧めはマンデリンのスクリーン19。焙煎したばかりだから、まだスモーキー。そして数週間前から今までの焼き方だと尖がりすぎかと反省して温度を下げて作ったものもあります。」
堀「何度下げた?」
豆「5℃。それで初めての人でも飲めるようになったというか世間の評判は良い。80℃位までお湯の温度を下げてゆっくり味を抽出するようにアドバイスしています。」
試飲タイム。
堀「社会に迎合したな。尖がったスモーキータイプ200gとブラジル200gをお願いします。」
豆「やっぱりそうか・・・・信念曲げないな。・・ねえ人生はどのように構築したらいいと思う。」
堀「そんなの知るか。小さく纏まってどうする。今夜僕は粗引き100℃でドロドロのマンデリンにしてやる。」
豆「そうですよね!だいたい雑誌片手に遠方から珈琲買いに来るやつなんか変人ばかりで、みんな気持ち悪い性格なの!寿司屋のカウンターに子供がいたら殴っていい。それにフランスのタイヤ屋になにが分かるってんだ!伊集院さんは正しい。」と急に元気になった。
写真は同じマンデリンだけれど5℃の違いのものではない。左はスモーキーなそれで右は極端な浅煎り。彼はきちんと実験していて浅煎りマンデリンは「飲んでみてください。」とサービスしてくれた。
豆からは、野に咲く花々のような、或いは田舎から送ってきたフルーツのダンボールを開けたときのような匂い。味はベリー系の強い酸味。春の香り。
BGMはシューマンの歌曲。