東京春の音楽祭「ワルキューレ」名演
ジークムント:ロバート・ディーン・スミス
ジークリンデ:ワルトラウト・マイヤー
フンディング:シム・インスン
ウォ―タン:エギルス・シリンス
フリッカ:エリーザベト・クールマン 他
ゲストコンサートマスター:ライナー・キュッヘル
指揮:マレク・ヤノフスキ
驚くほどの名演に遭遇してしまった。
ヤノフスキの統率力。そして全てのソリストに最大級の拍手を送りたい。
私は生きていたい。幸福でありたいと欲する感情。ただ論理的であろうとする時、自らの死を受け入れなくてはならない。カリギュラとケレアみたいだけれど、神聖なものと善が混同、ジークムントの情熱はあらゆる生を不可能にしてしまう。これほど残酷で不条理に満ちた現実が存在してよいものだろうか。聖なるものから除外され、そこにはモラルもなにもない。・・こんな話から始めたいのは歌手が頑張った等聴き手の我侭な粗探しなんぞどうでもいいレベルのワーグナーを体験することができたから。
これまで理想を求め色々聴いてきたけれど、不覚にも涙が出るほどに感動してしまった。それは単純に作曲家の策略にはまってしまっただけだけれど、あえて細かな話しをするなら、特に第1幕のラストと、第3幕でのブリュンヒルデがジークリンデに語りかける受胎告知に対するマイヤーの反応。終幕ラストの長い沈黙。(あれだけの余韻が感じられるなんて、馬鹿なブラボーが無くて良かった。)ジーンとしたのは僕だけではないはず。今更ながらワーグナーは恐ろしい。
シリンスの美声。(何故かヴォツェックを歌わせたい気持ちになった。)スミスの力強く輝く声。フォスターのブリュンヒルデは鼓膜に響くような強さは無いけれど徐々に調子を上げ満足。それと無警戒だけに最も心動かされたのはクールマンのフリッカ。(11日にリサイタルがある。聴きたい・・どうしよう?)マイヤーに関しては今更何も書く事はない。ただオルトルートやイゾルデとき以上の感動があった。かつて何度もマイヤーのジークリンデ聴いてきたけれど、僕には昨日が一番だった。そしてN響!普段から今回みたいに凄い演奏してくれるなら定期会員になってもいい。コンマスがキュッヘルさんだったことが名演と関係があるのかしらん。
自分に言い聞かせたくなるのは「生きていて良かった」ということ。人生の大きな体験だったと思う。CD掛けながらああだこうだ言っている場合ではないのです。とか考えながらもせっかくの記念にサインを頂戴した。
さほど揮:マレク・ヤノフスキ NHK交響楽団