ウィーン 最終話

 その1で記しましたが、夜のホテル・アストリアにはダウントンアビーに出演しているベイツそっくりのフロントマンがいる。微かに笑みを湛えながら「Guten Abend」 いつ如何なる出来事にも慌てない雰囲気。
 ところが昼間勤務のたぶん新人らしき眼鏡の若き女性は(僕がどんなに下手くそな英語だったにしても)非常に意思の疎通が困難で、パスポートをフロント金庫に預けていると伝えても、「だから客室の金庫は・・」と意味不明な発言。しかもこちらからフロント金庫のキーを提示しても「こんな鍵は知らない。」そんなことが何度もあった。それでも我慢しながら紳士的対応を心がけていた。しかしチェックアウト前日の15時頃に僕はついにキレてしまった。 
 体調が悪いなかルームキーを受け取り部屋に移動しようと思ったら、その眼鏡女がドイツ風の複雑な早口英語で笑顔もなく上から目線で話しかけてきたので、非常に腹立たしくなり「あ~っ、なに!」と日本語で返答。そしたら奥の部屋から慌てて年配の女性マネージャーらしき人がやってきて、スローリーな分かりやすい英語でフォロー。この女性はダウントンでいうなら家政婦長のヒューズさんのような感じだったのですが、「失礼をお許しください。明日ご出発とうかがっておりますが、追加宿泊のご希望があれば対応させていただきます。」そしてモーニングコールの必要の有無という単純な内容だった。僕は笑顔で「Nein Danke.」ついでに「あの眼鏡女トイレ掃除にでもさせろ。」とでも言いたかったけれど、急にそんな言葉は出てこないし、本音としてはゲーテかハイネ或いはホフマンスタールによるシュトラウス歌劇の一説をジョーク交じりに語りかけたかった。(実のところ眼鏡の彼女にも悪意はなく感謝しているくらいなのですが。)
 シュトラウス違いだけれど「こうもり」なら、「ダッタン人曰く、腹がへったら飯を喰え」・・この意味不明な公爵の発言だったとしても、もしベイツなら「シャンパンの飲みすぎにお気をつけてください。」の可能性があるような気がする。
 街を歩いていてカフェの店員から「ニーハオ」と挨拶されたが、穏やかな表情で「Ich bin ein Japaner」と切りかえした。言語の壁。文化の違い。所詮僕は孤独な観光客にすぎない。
 
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 貧しくても構わない。森を散策し小動物と戯れ野原で横になり時々詩を書き生活の糧とし月に一度の贅沢はオペラの安席、なんていう生活ができないものだろうか。(色々と検索しながらわりと本気で未来を模索している。)
 強烈な≪日本に帰りたくない≫感情が芽生えパニック障害になりそうになった。事実帰りのアエロフロートの中で気分が最悪になり数回安定剤を服用し前列のアメリカ人と大喧嘩。思い返せばトランジットのモスクワ空港で視界が砂の嵐のように白くなり倒れ込みトイレで2度嘔吐した。そんなこんなでツレとは成田離婚状態。数日口をきかないピンチが訪れることになったのですが、素直な気持ちとしていまだに逆ホームシックである。 
 関係ないが写真はCafe Central。友人のバリトン歌手さんのお気に入り。混んでいて息苦しくなってしまった。
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 「カプリッチョ」後の夜、薬を飲んでも全く眠れなくて時計をみたら3時だったけれど気分転換に部屋を出た。
 どうやらエレベーターホールの鏡にむかい自分を撮影している俺。この写真は恐ろしいことに撮った意識がなく、あとから発見してなんだこれ?
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 フロントまで行ったら、これだけは明確に記憶しているのですがベイツが笑みを浮かべ渋い声で「Guten Morgen.」 それに対して「Morgen Wiens ist früh」と返事。正しい言語なのか発音ができたのか自分でもわからん。 
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 たぶんケルントナー通り。誰もいない。
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 これはどこだか不明。工事現場に見える。
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 歌劇場の正面玄関だと思う。
 その後ホテルに戻った記憶がなくて、気がついたら何処で買ったのかトニックウォーターのボトルを握りながらベッドの中にいた。間違いなく意識不明の徘徊。安全な場所とはいえ狂った族に殺されていてもおかしくないと感じた。
 帰国後さすがにまずいと思い新宿の病院で光トポグラフィーの検査を受けました。
 面倒なので結果は書きません。
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 最後に自分のために購入した記念品。
 これまだ聴いていなかった。シェーファーパーセルとジョージ・クラムを歌っているCD。
 それからフロイトのピルケース。ちょうど一日分収納できる優れもの。
 

 現在仕事に関しては不思議なもので良い結果が出ています。
 集中できる時間は限られていますが、僕は勤め人ではないのでどうにでもなります。
 ただ数を更に減らしました。
 
 
 今回のブログは限定にしようかと考えましたが、本名じゃないからどうでもよく全公開。