エッケハルト・ウラシア死去

 新しいスマホに変えて約半年、無駄な情報の氾濫が精神的に苦痛で解約を考え始めています。
 少し前から携帯メールを止めていて誰かに迷惑をかけてるように思うのですが、急ぎの用事で送受信に疑いを持てば電話を鳴らすはず。それでいて殆ど「電話には出ない」生活に決めているのは、急ぎなら留守番電話に録音するはず。わがままな対応ですが、電話の着信音や振動にビクビクしてしまい、現在のコンディションで人と話せる状態は24時間内で1~2時間あるかないか。Twitter・FB・Instagramはとりあえず登録したものの、まずInstagramが不要だと気がつき止めた。情報として知識に繋がるものの他人の俗っぽい写真は身体に悪く、ましてこちらから公開したい感情が希薄である。僕は整いすぎた写真や絵画が苦手。盛り付けの美しい料理は「素晴らしい!」と思いつつ、例えば〈数枚のお肉に数種類のお野菜で彩られたプレートにソース〉の場合、思考は食べやすさが優先される。美を追求するがあまり肉の反対側にソースがあったら、僕はシェフを呼び出して作り直すように命じるだろう。デザートには夢が必要と認識しつつ、食べやすさ以上に〈手が加えられ過ぎた〉形状に嫌悪を覚える。自発性を重んじながらいかに自然な旨味を提供するかに美の基準を確認する。時代錯誤のテーブルナプキンの折り方にしてもそう。Instagramから見えてくるものは汚れた人間の無駄な虚栄である。
 Twitterは情報の速さに役立ち、FBで物事を精査する。最近では秋に体調不良で来日できなかったヤンソンスやグリモーの活躍をリアルタイムで確認しながら安堵。しかしながらそれ以上踏み込まないようにしているのは、意味のないつぶやきや他人が「今日はこういう人と○○でした。」イイネ。不思議なのは1枚の写真やシェアから人間性がわかってしまう部分にあって、優しい人柄、謙虚さ、ナルシズム等様々・・結論として無くても生きていられることは確か。
 ここ1週間、前回のブログで記した友人との再会への手続きでメッセンジャーを数回利用した程度で、あとはワーグナーシェーンベルクばかり聴いていたが、油断すると大事なニュースが急ぎ足で通過してしまう。
 友人とのことはその気になれば次回書くかもしれない。書かないかもしれない。ただ人生の特別な1日になりました。

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 エッケハルト・ウラシアが2月20日に亡くなっていた。
 Ekkehard Wlaschiha (28 May 1938 – 20 February 2019) was a German operatic baritone who specialized in Wagnerian "villains", such as Alberich, Klingsor and Friedrich von Telramund.
He performed at the Bayreuth Festival and at the Metropolitan Opera, and left many recordings.
 ご高齢だとは認識していたけれど、僕にとっては特別な名バス・バリトン。とても悲しい。
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 この写真はバイロイト音楽祭でのテルラムント。非常に印象深い表現だった。
 映画監督のヴェルナー・ヘルツォーク (Werner Herzog)が演出した「ローエングリン」に出演していたときのもの。この演出は確か1990年~数年続いた。(表題役はポール・フライ)まさに映画のような美しい舞台でローエングリン上演史上初めてラストシーンで雪を降らせた。とは言ってもこの人の映画が美しい映像だとは思わないが。当時はラジオで聴いていて動画は何年もしてから観たので、評論家の三宅さんだったか?ラストシーンの改定についてお話されていたことを記憶している。ローエングリンが旅立ったあと、オルトルートとエルザが互いに向き合い支えあうように両者が息絶える予定だったのに、どちらかが手を差し伸べてしまい、観客からは2人の和解に思われてしまったということ。でもDVDでもその雰囲気だったから「それでいいんじゃないの」になったと想像する。個人的には「今さらどっちでもいい。」
 スラブ系字幕つきの動画があったので貼り付けました。オルトルート役のガブリエレ・シュナウトの声が最も強烈でありながら、最も何を歌っているのか理解できない部分を差し引いても、善が敗者・悪が勝者になっている。
 Konig Heinrich ...................................Manfred Schenk
 Lohengrin ..........................................Paul Frey
 Elsa von Brabant................................Cheryl Studer
 Friedrich von Telramund................... Ekkehard Wlaschiha
 Ortrud .............................................. Gabriele Schnaut
 Heerrufer ......................................... Eike Wilm Schulte

 エッケハルト・ウラシア 記憶の範囲内で何を聴いたか考えているのですが、テルラムント、オランダ人、アルべリッヒ、アンフォルタス、クルヴェナール、ザックス。もしかしたら全部ワーグナーかもしれない。ミュンヘンでのアルべリッヒが衝撃的でどうにかサインをもらいたいと走りまわった若き時代。いきなり楽屋口から登場したベーレンスに心奪われアルべリッヒなんかどうでもよくなったことだけは記憶している。
 
 こんな動画もありました。
  Da Capo - Interview with August Everding 1998   インタヴュアーのエファーディングの落ち着きの無いキンキンした喋り方が気になる(笑)だんだん腹立たしい気持ちになってくる。ウラハアは喋る声も良い。

 https://www.youtube.com/watch?v=DeKPTP3ZNFQ 3幕だけね。1時間11分辺り五重唱~ラストまで感動的なのは自分がその場にいたからかな。コロのワルター、シュライヤーのダヴィット、ザックスは今日の主役ウラシア。これは以前も紹介させていただいたゼンパードレスデンでの誰かの隠し録り「マイスタージンガー」ですが、真冬の誰もいない深夜のデュイツブルグのホームで旧東側方面に(クラクフ行きだったかな?)むかう電車を長々待ち、早朝のライプツィヒで下車。不味い揚げパンと不味い珈琲の朝食は駅のベンチ。ドレスデンまでのチケットをなんとか購入。(英語が通じない)ドレスデン駅前にはまだレーニン像があった。
 小さな道に対して大きな歩道。赤信号が青に変わるのを待つ家族の姿。お父さんとお母さんに手をつながれた5才くらいの女の子が楽しそうな笑顔。車道は地平線につながるような真っ直ぐな道。左右どちらからも車は来ない。日本なら皆が無視してわたるだろうな。青信号になり家族は歩き始めた。そして僕もそれに続いた。
 英語が通じたのはホテルと劇場くらい。でもレストランの人も出会った人も親切で素敵な街に来たと思った。
 この日はコロが歌った最後のワルターだったらしいが、キャストが誰なのか劇場でメンバーリストをもらうまで知らなかったから本当に驚いた。
 終演後楽屋口でコロに挨拶。「日本から来たの?」・「そうだよ。」・「ご苦労さん!」
 その時ウラシアが僕の横を通過。デカイ!気どった雰囲気のない、寧ろ無骨なマイスターを演じ、最後まで響きわたる声が劇場にこだました。優しそうな笑顔で集まっていたファン皆と握手していた。
 サインもらうチャンスを永遠に失った。
 R・I・P