ミヒャエル・ギーレン死去

 今日の訃報。

 昨日3月8日、ミヒャエル・ギーレンが他界した。
 視覚の障害から5年前に引退。御年91。
 実演に接することができなかったことが残念でならない。
 ブログというのは有難いもので、コメントくださるM・Fが色々教えてくださり徐々に夢中になったことに始まりました。CDは購入したことありませんが、youtube等で少しずつ学習し、こりゃ凄い人だとなりました。
 実は数回舞台ご一緒したことがあるピアニストさん。(飲み会ばかりのブログ仲間の数名や舞台を聴きにきていただいた方はご存知でしょうが)BPのコンマスまで上り詰めた当時の若きDA○SINに「彼いい奴なの~」と譜めくりをさせていた彼女が1986年 - 1999年ギーレン・1999年 - 2011年カンブルラン時代(ほぼカンブルラン時代だろうけれど)フライブルクで活動していたと知りうらやましく思っていました。他にもフライブルク関係者は友達が数名いますが、どうも話を聞くと生きる事に必死であまり舞台鑑賞できない状況だったようです。
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 ギーレンの大きな功績はやっぱりこの2つ。
 ※ベルント・アロイス・ツィンマーマン作曲。
 歌劇『兵士たち』(Die Soldaten1960年に初稿、1964に改訂稿が完成。1965年2月15日にケルンでギーレンの指揮により初演。
 https://www.youtube.com/watch?v=WleBvPBuUiY ←参考資料として数年前のバイエルンオペラ。キリル・ペトレンコ指揮。主演はクレイジーなバーバラ・ハンニガン。

 ※同じくベルント・アロイス・ツィンマーマンの作品。
 『ある若き詩人のためのレクイエム』
 (何人もの詩人、哲学者、政治家、報道や著作からのテキスト、ソプラノとバリトンのソロ、三組の合唱、語り部、オーケストラ、ジャズバンド、エレクトロニクス、オルガンのための言語作品)(1967-1969)
 世界初演は完成した1969年にエッダ・モーザー(ソプラノ)ミヒャエル・ギーレン指揮、ケルン放送交響楽団、ケルン放送合唱団、マンフレッド・スクーフ・クインテット他。
 https://www.youtube.com/watch?v=5xDCUywg_0k ←参考資料としてギーレンの録音。何故か39分間しか聴けない。僕は大野和士氏の実演に接してから夢中になってしまい何度か紹介しているので、ご興味ある人は購入していただきたい。ベルティーニ盤もありますが、ギーレンを聴かなければ必ず後悔する。
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 作曲家は翌年1970年にピストル自殺。自分の音楽が理解されないと考えたようです。もう数年待てば世間の理解が追いついたように思うのですが、ここまで己を追い込んだ表現は資本主義的金儲けと重なるはずもなく死にたくなる気持ちを理解できなくもない。
 何故なら1970年の日本といえば「人類の未来と調和」とかダサいコピーの万国博覧会で浮かれていたはずで、世間の大半が間違った未来を夢見てしまった。

 近々東京五輪、そしてまた万博・・「本当にもう嫌だ!」僕はどこかに逃げ出すだろう。
 嫌といえば、ミヒャエル・ザンデルリンクドレスデンPと来日するので、ブルックナーだとしたら聴こうかなと調べてみたら嫌いな作品ばかりで、特にお得な金額の新宿文化センターのプログラムには吃驚した。なんと「未完成・運命・新世界」って、息苦しくなり気絶しそうになった。いまだに日本はこういう作品が具合がいいと思われているとしたら、人類の未来と調和どこの話ではなく土石流に巻き込まれた気分である。 
 
 実はブログではあまり書かないでいましたが、ギーレンのおかげで苦手だったマーラーをわりと普通に聴けるようになってきた。理由は自分でもはっきりしていないのですが、気どった雰囲気のない演奏から(時に冷酷?)マーラーの実像が見えてくる印象があって、以前ハンス・ロットから抜け出せないと記したけれど、そうだとしたら精神力の強い人間であったとしても悩み苦しんだはずであり、どこかのタイミングで亡き友に対して和解を求めたように感じられてきたのです。まず以下の演奏。アルマの主題。ギーレンはバトンテクニックが優秀だけではなく、人の心を読む力にたけていたように聴こえてくるのです。 

 死人に口なしではあるが、ロットが「これは君の音楽だ。自信を持ちたまえ。」と天上世界から語りかけ未来への導きすら感じられる。(あくまで個人の感想で論理的じゃない。)  https://www.youtube.com/watch?v=MpV5-FkLe-4&t=1988s  G.Mahler : Symphony No.6  SWR Symphony Orchestra Baden-Baden and Freiburg,
 Michael Gielen (conductor).
 Groβes Festspielhaus, Salzburg, 21.8.2013

 
 そしてもう一つ。
 Gustav Mahler
 Symphony No. 10 in F-sharp majorーAdagio
 SWF-Sinfonieorchester
 Michael Gielen, conductor
 10番のアダージョ楽章。ギーレンのアプローチは基本同じに思えるけれど、かつての天上世界からの投げかけに疑いをもったマーラーが7番~9番で苦しみぬき、ついにここで肉体を放棄し魂の飛翔に成功したのではないかな。この録音では15分27秒のffで2人は和解した。美しき主題は青空の中を浮遊しながら懐かしきウィーンの街並みを俯瞰しているよう。
 マーラーに関しては優秀な演奏が多いけれど、何故だいたいの巨匠はかっこつけたような世界に遊ぶのだろう?そんな気持ちになりました。
 ギーレン。こういう人が本当の指揮者だと思う。
 R・I・P


 ※来週は楽しみな、カンブルラン指揮の「グレの歌
 珍しく数名の指揮者による演奏で予習していました。クーべリック、エルダー、サロネン、メッツマッハー等。歌詞もだいたい読み込んでいます。
 もしかしたら泣くかもしれない(笑)