「兵士の物語」の衝撃

 音楽好きが高じ舞台での司会、語り、朗読?演奏会でお話を要求されることがあります。それで一年前に「動物の謝肉祭」を文京シビックで、あれは自作の朗読だったのですが、魅力的なピアニストとの共演で兎に角やって良かったし貴重な経験だった。
 次は別の団体で、6月に埼玉の北本市團伊玖磨の合唱曲と朗読のコラボ。
 詳しい内容はまだ知らされていなくて全てはこれからですがスケジュールは空けてある状況。
 今までは全部が他者の企画、つまり依頼された舞台で種類も様々だった。
 クラシック以外の苦手な分野だってやって良かったのは、普段の仕事では絶対に得られない独特の緊張感と達成感だと思います。
 そういえばサイトウキネンで谷川俊太郎が自作詩の朗読をしたみたいですが、私はああいうヒューマニズムを語る資格はないし、はっきり言って大嫌いな世界だから、分野に拘らないといっても何でも良い訳ではなく、忍耐には限度がある。(しかしギャラが高ければ魂を売るかもしれない。)
 それで本題ですが、自分で企画するなら何がやりたいかと考えてみたのです。
 この際実現できるのかどうかは二の次で、単純に作品に向けられた愛着だったり欲望の趣くままの話。
 それで、これは面白いと発見したのは、ハルコウさんのブログで紹介されていたストラヴィンスキーの「兵士の物語」で、昔は「なんて退屈な作品だろう」程度でしたが、改めて凄い作品だと関心したのです。
 ジャン・マレーが朗読している録音を買ってみようなんて思いながら、とりあえずYOUTUBEで何か見られるかな?と検索、いきなりバレンボイムが映し出され指揮を始めた。
 このストラヴィンスキーが最大の衝撃だったのですが、なんと朗読がパトリス・シェローではないか!
 私は暫くパソコン画面を見つめたまま動けなかった。
 つい昨日シェローの映画「ガブリエル」を鑑賞したばかりで、奇妙な影響はあるかもしれないけれど、朗読が上手いし面白く、バレンボイムの音楽も素晴らしい。
 シェローの朗読は同じストラヴィンスキーで、サロネンの指揮する「エディプス王」のCDを持っている。
 サロネンも良いから愛聴しているけれど、今回の「兵士の物語」はライヴ映像で勿論動画だから、すぐにお気に入り登録をしました。
 私は急に全てやる気が無くなった。
 崩れ去るイマジネーション。
 こんなこと絶対にできない。
 
 因みにシェローは、語り部・兵士・悪魔の三役を、まるで落語のように語りわけている。
 醸し出す情熱、知的なアプローチ、演奏家との信頼関係、驚異的である。