ラ・フォル・ジュルネ2011

 ラ・フォル・ジュルネに行ってきました。
 場所は実に久しぶりの読売ホールで、前回此処に来たのが何時で何しに来たのかも全く憶えていない。
 ただ前回は間違いなく下が「有楽町そごう」の時で、それも今ではビックカメラだから、どうしようもないくらい落ち着かない場所にいきなり別空間が存在している感じ。
 七階のホールに向う一階の入口がビックカメラと一緒なのも問題ですが、「エレベータは大変混み合いますからエスカレーターをご使用ください!」と係員が大きな声を張り上げているのもラ・フォル・ジュルネらしく、その指示に従えばホールに行き着くまでに「ビック♪ビックビック♪ビックカメラ♪・・」を聴かなくてはならないから、小生は時間にゆとりを持たせてエレベータに並んだ。
 読売ホールは日生劇場に似た空気感で所謂昭和の東京の姿であります。
 ロビーには映画試写会や落語のポスターが貼られているから、普段からクラシックの演奏会とは無縁で音響に期待してもいけないし、それでも席に着いてステージを見ると、その昔フランク永井が「有楽町で逢いましょう♪」なんかやったのかな?きっと若い男女が「ナウでヤングなアベック」と呼ばれていた時代に銀ぶらして此処でショーを観て、その後で東京會舘か帝国ホテルのバーに行って「小海老のカクテル」を摘みにスコッチウイスキーを飲んで愛を語る・・なんて妄想していたら奏者が出てきた。
 それで音楽ですが、良い演奏でした。
 特に田部さんのピアノが素晴しくて、芯のあるキラキラした音色で最初から私は聴き入ってしまった。
 それでも一楽章でチェロが堂々と半音くらいずらした瞬間は流石にズッコケましたが、ビオラも一人遅れてしまったり、ライヴなんてそんなもんでしょう。
 思い返せば前半は、つまり二楽章までは互いにテンポを合わせているように慎重過ぎ?音楽らしさが無かったけれど、3楽章からは勢いの有る肉食系の音楽に変化し、観客の誰もがブラームスに感動と思いきや、周辺では寝ている人が多かったから名演なのか定かではない。
 たぶんピアノと四重奏でせいぜい一回か二回ぐらいしかリハーサルができなかったのではないのでしょうか。
 改めて良い作品だと感じた。
 終演後1,000人以上の人たちが狭いエレベータホールに群がり、私は人の波に呑まれるままに階段方面に進み、仕方がないからそのまま歩いて下まで降りたのですが、余韻に浸りたい状況はビックカメラのテーマソングに全て掻き消された。
 お腹が空いている自分に気がつき、「何を食べようかな。」
 ラ・フォル・ジュルネはお祭りですから沢山の屋台が並んでいて、沖縄の人が作っているオリジナルのタコライス、これが美味しかった。
 無料のコンサートも少し聴けまして、ピアノソロやヴォーカル8人の演奏でしたがどれもマイクから音を拾っているので害が感じられ退避、グッズ売り場で時間を潰し、16時30分開演の次の会場ホールCに向った。
 下野竜也指揮の読響「ブラームス第二交響曲
 下野さんは昨年の感動的なサイトウキネン松本以来でしたが、彼を見ると半ズボンを履かせランドセルを背負わせ黄色い帽子を被らせたくなる奇妙な衝動を覚える。
 しかも、彼には秋葉原が似合う気がしてならない。
 一楽章の出だしでホルンが音は合っているのでしょうが、想像と異なる可笑しな音を鳴らすもんだから最初から読響モード全開である。
 ここでは細かな批評は控えることにしたいが、立派な演奏で客席が盛り上がっていたことは事実。
 私は松本でも感じたのだけれど、下野さんの音楽は優等生の其れで、つまり硬派にも軟派にも成りきれていないオドオドした内向的な響きに聴こえてくる。
 音を大きくしたりテンポを変えてみたり、工夫すればするだけそう感じるのは何故なのでしょうか。
 ホールCの音響は国際フォーラムの中ではまともな方でしょうが良くはない。
 読売ホールは不思議ですが好ましく感じられた。