レクイエム

 シューマンには3つの「レクイエム」がありまして、ゲーテの詩による「ミニョンのためのレクイエム」
 これは「ウィルヘルム・マイスターの修行時代」末尾第8巻から大半が引用されている。
 ミニョンはイタリア生まれの少女で、誘拐されて北国の一座で踊り子をしていて、ウィルヘルムへの恋心を抱き、しかし実らぬ愛に絶望し祖国を思いながら孤独な死を迎える。
 クララは「詩と音楽とがひとつの心から出た。」と言葉にしている。
 何かで読みましたが、シューマンは大ゲーテそのものより、ミニョンの無垢な生き方に共感したらしい。
 6つの曲で構成されていて、長くても15分程度の音楽。
 それから、作品148の「レクイエム」 これは作曲家がデュッセルドルフ音楽監督時代にカトリック教会に向けて作曲したといわれているが、プロテスタント中心のザクセン生まれだから心の葛藤はあったと想像する。
 よどみのない、なんともいえない気品と確信に満ちた世界。
 たぶん精神的に安定していた時期に作られたのかなと個人的に感じる。
 全曲で約40分の大作である。
 以上の2作品は有名ではありませんが、いつか誰かが演奏するでしょうし、サヴァリッシュなんかもCDにしているから比較的知る機会に恵まれているような気がします。
 問題はもう一つの作品90より「レクイエム」なのですが、私はこの曲を初めて聴いた時にどうしてか解らないけれど涙が止まらなくなってしまった所謂「恐怖の音楽」である。
 前2作品はソリスト合唱とオーケストラによる一般的なオラトリオの形態をもっていますが、「作品90より」はピアノ伴奏による普通の歌曲である。
 シューマンがレーナウの詩に6つの曲を作り、何故か最後の7曲目にレーナウの詩ではなく作者不詳のカトリックの聖歌を引用しているのです。(7曲一纏めで作品90ということ)
 この辺りの謎がとてもシューマンだなと私は思う。
 以下、ネットの引用のアレンジですがお許しいただきたい。
 
 痛みに満ち溢れ苦役より安らぎ         Ruh von schmerzensreichen ・・・すいませんがドイツ語は大
 熱き愛の炎からも安らぎたまえ         変なので省略します・・・ご自身でお調べください。
 聖なる交感を
 望み続けし者は
 今やみまかりて
 救い主の家にある
 
 正しき者には明るく輝けり
 星たちがその墓の上で
 その者は自ら夜の星となり
 現れ出るであろう
 その者が
 主を天の栄光に見出した時
 
 その先駆けとなれ聖なる魂たちよ
 聖なる精霊よ慰めを失いたもうな
 汝は聞こえるか?喜びの歌の響きを
 祝福の音楽を
 美しき
 天使たちの竪琴の調べ
 
 痛みに満ち溢れ苦役より安らぎ
 熱き愛の炎からも安らぎたまえ
 聖なる交感を
 望み続けし者は
 今やみまかりて
 救い主の家にある         (詩不詳)
 
 
 作品90より「レクイエム」 恐怖を超越し、安らぎと慰めの世界に導かれる音楽。
 CDはEMIから発売されていた、「ルネ・コロ」シューマン歌曲集の全32曲の中の31曲目に録音されている。
 アーウィン・ゲージの伴奏も素晴しい。
 他の歌手では聴いたことがありません。
 書庫のカテゴリーに悩みましたが、文学ではなく「音楽の話」に所属します。