タンザニア豆の記憶。

 珈琲豆を買ってきました。
 今回はマンデリンとタンザニアにしてみました。
 タンザニア豆は飲んだことがないと思っていたのですが、食後に淹れてみたら飲んだ記憶が蘇ってきた。
 学生時代に壁画制作のアルバイトで茨城県の大洗に滞在し、当時の大洗は夜になると遊びに行く場所もなく、たった一軒怪しい感じのライトが点いたり消えたりしているカフェが開いているだけで仕方なくその店に入ったら、不良高校生の溜まり場になっていて、それでも入店した以上注文をしないわけにもいかず私はキリマンジャロブレンドを注文しカウンター席に腰掛けた。
 そうしたらもの凄く不味い珈琲が出てきて「カフェオレにしておけばよかった・・」と後悔したのですが、それでも不味さの中から仄かに独特のフルーティーな香りを感じ取って、後々振り返っても煙草の青い煙が立ち込めた環境の悪い店内の記憶とごっちゃになり居心地の悪い黒い液体の臭いと強烈に憶えていた。
 飲み終わった後に舌の奥の方から微かに特徴のある香りがやってくる。
 それが今日になり、キリマンジャロブレンドの中にタンザニアが微量かもしれないけれど含まれていたと時空を超えて正確に思い出したのです。
 味や香りの記憶は恐ろしいほどに確かだと何時も思っていて、特に美味しい場合と不味い場合、それから特別な状況にある場合がそうだと感じられる。
 豆を買ったあと、藤沢のタワーレコードに寄ったら「カルロス・クライバー 無への足跡」というDVDが売られていて、先日BSプレミアムで放送された内容と同じかな?と思いながら、(今自宅はBSを観られない環境にしている。)私は観ていないから買ってみました。
 それで途中まで観たのですが、実に面白い!
 細かな記憶ではないけれど、初めてクライバーの実演を聴いた時と茨城の壁画は確か同時期で、もしかしたら「バイト代でチケットを購入したのかもしれないな」と記憶が飛躍して唐突に訪れた。
 それだけでも、タンザニアの香りは忘れがたい。