バラード
手に入れたばかりのレコード、レーヴェの「バラード集」ヘルマン・プライ1962年の録音を聴きました。
レーヴェが思い出深いのは、数年前に二期会バリトン歌手、伴奏ピアニストと共にサロンコンサートをしたことがありまして、原語で歌われる前に日本語に翻訳したゲーテやハイネを朗読したのですが、とても貴重な経験でドイツバラードの面白さを身体中で感じることができました。
レーヴェを中心にシューべルトとシューマンで、元来ドイツ語で書かれた作品であることに嫉妬を覚えた。
しかしお客様は日本人ばかり、自ら気に入らない翻訳の表現を改定させたりしながらなるべく解りやすい言葉で表現してみました。
3人で練習していた時より、自宅のデスクで詩と対峙している時ばかりが思い出される。
誤解が生じると困るのですが、バラードとは本来中世の欧州で多く作られた定型詩を意味し、所謂「譚詩」、素朴な言葉で構成される小物語である。
録音した自分の朗読があるのですが、二度と聴きたくないくらい恥ずかしい。
ゲーテになろうと真剣だったのですが、いくらイメージしても無理だった。
若き日のプライは難解な音楽を、詩の吟詠のように語るように歌う。
子音の美しさ、深みの有る豊かな声、低音の支え、時にはテノール歌手のように楽々と高い響きを獲得表現する。
教会の鐘に追いかけられる少年の話、深夜繰り広げられる小人達の婚礼の宴、主人公オールフが奇怪な死を迎える怖い話、兵士の苦悩、そして魔王。
完璧な芸術がドイツ生まれていたのです。
それを、名バリトン故プライが我々に今でも語りかけてくれる。
これ名盤です。