マーラー 8番 ⑲

 マーラー「千人の交響曲ショルティ指揮シカゴ響ウィーンの合唱団(ロンドンレコードだからデッカ)
 とても綺麗な録音で、しかしあれは綺麗なんてもんじゃなく、実際には起こりえない緻密な音のつらなりはオーバーダビングの連続だろうから、マーラーが聴いたらさぞかしびっくりするのではないだろうか。
 20才の頃に日本のオケで一度だけ生で聴いたのですが、もっとアンバランスで泥臭い音の重なりで、どんなに工夫しても実演ではああなるんだな・・と思っていました。
 しかし改めて聴くと、やたら大袈裟な音楽で目が回りそうになる。
 いろんな指揮者が録音されているのでしょうが、他の演奏を聴くまでもなくショルティ盤がベストなのだろうと思い込み、恐らくハプニングにでも巻き込まれない限り同じ曲のCDやレコードは絶対に買わないであろう。
 シカゴは凄いオケで特に金管がどう考えても世界一で、そいつは信じられないくらい豊かに響き、偉大な演奏なのだから小生にはもう充分・・・流石ショルティであり、これ以上の8番は存在しないと判る。
 細かな部分では歌手陣が素晴しく、特にソプラノのへザー・ハーパーとルチア・ポップが透明感のある美しき声質、アルトのイヴォンヌ・ミントンも良い。
 テノールのルネ・コロはソロの出だしで多少フラット気味でちょっとだけ気になるのですが、敢てデッカの技術者やショルティが録り直さなかったのでしょうから意義のある歌唱であると考えた。
 「Jungfrau. Mutter.  Konigin .♪/聖処女よ、聖母よ、女王よ・・」(すいません。ウムラウトの書き方がわからない) ゲーテの言葉が聡明に力強く高らかに歌い上げられ、ライヴを聴いているような感動がやってくる。
 やっぱりコロでなければならなかったのだなと感心した。
 私はあの瞬間のために其れまでの長い道のりを我慢しながら聴いていたみたい。
 前後のショルティの繊細な表現も印象深い。
 しかし当時のデッカの録音は正しい方向なのだろうか?
 音が綺麗過ぎるから、つまり現実のホールの響きと相反にあるように感じられて、自分では何を理想としていいのか判断ができない。
 冷静になっても、やっぱり有り得ない世界だと思う。
 マーラー克服企画は先が長いなぁ、既に挫けそうな小生である。
 次に誰の指揮の何番なのかなんて、中古レコード屋での出会いが全てでありタイミングの問題だから決められないです。
 今回のショルティ盤は600円でした。
 1,000円以上のはパスする予定です。
 あくまでお金を掛けない大人の遊戯なのです。