お客様にイタリー料理

 テノールのサルヴァトーレ・リチートラ氏(43歳)がバイク事故が原因で亡くなってしまった。
 ボローニャ歌劇場の日本公演「エルナーニ」に出演予定の直前で、なんだかショックだった。
 youtubeでリチートラを検索し、リッカルド、カヴァラドッシ、カニオ等次々と聴いてみると、正直な感想として彼はまだまだ発展途上で上手くいってもテナーの頂点までは登りつめなかったように思うけれど、それでも改めてかけがえのない歌手を失ったのだなと悲しい気持ちになった。
 今年はラ・スコラも他界、偶然だけれどこの2人はタイプが似ているように以前から感じていて、カンツォーネなんか歌わせたらイタリーの太陽を想像してしまうくらい兎に角底抜けに明るい声質だった。
 そして何時の時代もテノール歌手は人材が不足しているように感じてしまう。
 @今日は友人が訪ねてきてくれて当方で夕食作り。
 軽く火を通したイカをオイルとハーブでマリネ、湘南の鰯を塩気を強めにこれまたマリネ、ニンニクに鯖缶詰とイタリアントマトをオリーブオイルを加えながら煮込みパスタのソースに仕上げた。パスタを盛り付けながら最高のアルデンテ状態に満足しながら、それでもフレッシュなバジルを買い忘れたストレスを思い出し、仕方が無いそのまま食べていただいた。
 「お好みで辛味オイルと粉チーズをお使いください。」
 味は概ね好評だったようですが、もしかしたら義理で食べているのではないだろうかと極度に不安になった。
 でも、こんな時は明るく過ごせるイタリアンが良いようだ。
 しかし、死ぬとどうなるのだろうか?
 まず音楽は聴けないだろうし食事も必要に無い。
 人生の初期段階、生まれてくる前の記憶が曖昧なあの場所に戻っていくのかな。
 思考も行動も無いし、何よりも暗闇で自分の歩みも忘れさせてくれるのだから悪くないのかもしれない。
 せめて生きている時間は食に拘りを持ちながら良い音楽を聴いていたいと当たり前のように感じた。
 そこで、お土産にいただいたシュークリームを食べる私。
 リチートラ明るい歌声をありがとう。
 臓器と角膜は故人と家族の意思で提供されるらしい。
 合掌。