戦え!ボニゾルリ、ひとつの音だけに掛けた人生。

 
 「テノール馬鹿」第2弾とブログ300回目の記事を祝し、フランコ・ボニゾルリの「見よ恐ろしい火を」です。
 これ以外になにがあるというのだ。
 誰にも文句を言わせない、アリアの最後の高音だけに命を掛けた人生だった。
 この動画は私がこの人を知った最初の時で、まだ中学だか高校の頃だったと思います。
 NBSの主催「オペラガラコンサート」が東京文化会館で行われまして、来日メンバーの目玉だったフレーニとギャルロフが夫婦仲良く風邪を拗らせ、たしかカプッチルリとボニゾルリが曲数を増やしコンサートの穴埋めをした。この舞台にはバルツァとヤノヴィッツも参加していたのだから豪華な企画である。
 ボニゾルリは「この曲に関してだけ」は他の追随を許さない力を持っている。
 あの日も野人の雄叫びの如き高音が上野の山に響き渡ったのです。
 人生の全ては最後のC音だけに集約されていた。
 この瞬間を知ってしまった未成年の私は寝込んでしまうくらいのショックを受けた。
 だから、それ以降テノールなら「トロヴァトーレ」のこのアリア、(ソプラノでは「椿姫」一幕最後の音。)歌手には相当頑張ってもらわなければ満足できない精神状態になっていて、別の見方をするなら、あの瞬間以外に「トロヴァトーレ」になんの価値があるのだろうか。
 ボニゾルリの同曲はyoutubeでまだ沢山聴けるので都度紹介してみたいのですが、例えばヴェローナの公演ではオペラなのにアンコールまで、つまり続けて2回歌っているのですから爆笑である。
 そういえば、「トゥーランドット」のカラフを実演で聴いたことがあって、「誰も寝てはならぬ」を見事に歌い終わった後に客席に向かいガッツポーズをしたのですから、演出無視というか作品無視というか、本当に馬鹿なのかもしれない。
 亡くなったと知った時は悲しかった。