Ombra mai fu ジーリ

 
 第6弾はべニャミーノ・ジーリ(1890年3/20~1957年11/30)にいたします。
 最初は存在があまりに偉大すぎて書くつもりは無かったのですが、デル・モナコの動画を使ってしまったことで大きく視野が広がり、やはり先人ジーリを紹介しないわけにはいかない。
 カルーソーが亡くなった後に彗星のように現れた名テナーだったことから「第2のカルーソー」とニックネームがあったそうですが、本人はそれを嫌がり「第1のジーリ」として認識されたいと望んだ。
 世間がジーリを求めたが、ムッソリーニのお気に入り歌手になってしまったことがちょっとした不幸だったかもしれない。
 しかし第2次大戦中は一度引退を表明し、戦後数年にわたり活動を再開した。
 現在はSP時代の復刻CDも沢山発売されているから気軽に聴くことができる。
 それ以上に我々にとってラッキーなのは音楽映画の存在で、かの有名な「忘れな草」はタワーレコードで売られているのを見たことがある。
 そこで「忘れな草」の動画をアップしようかなと思いましたが、じっくり見ていると音と映像が別録りのような感じがしてきまして、ヘンデル「Ombra mai fu」にしてみました。
 素晴らしい声、オペラハウスでどのように響いたのだろう。
 ジーリに限らず別テイクの映像で有名になった歌手もいるとは思うのですが、可能な限りライヴ音源を紹介材料として使いたいと考えています。
 ジーリの特徴は太く響く声にありますが、それ以上に技巧的な歌唱でその後の歌手に影響を与えたような印象があります。
 例えばタリアヴィーニがP〔ピアーノ〕で歌うときなど、もろにジーリ風だと私には感じられる。
 「人知れぬ涙」等は良い例かもしれない。
 映画「忘れな草」は〔Piano〕に歌われているシーンと、恋人を追うがため指揮者のテンポを無視し〔Forte〕で疾走するシーンとあるのですが、どちらが本当のジーリなのか、どちらが本当の「忘れな草」なのか、意味無き思考を繰り返す。