愛する者よ列車に乗れ

 パトリス・シェロー監督「愛する者よ列車に乗れ」の最初の部分。
 画家の葬儀のために美しき男たちが集いリモージュに向かう列車に乗るシーンから始まる。
 最近リモージュ製陶器の青いカフスボタンを愛用している。
 場面が次々と変化するから、1回観ただけでは理解が追いつかなかったが、数回映画館に通い徐々に言葉が脳に吸収され、ゆとりが感じられるようになった。
 それでも映画館通いを私は止めなかった。
 5回6回7回・・10回
 結果セリフを暗記するくらいに思考を強化すれば一切の無駄な言葉が存在しないと気がつく。
 また音楽の使い方が絶妙なタイミングで訪れる。
 その昔トーマス・マンが「美とは絶対的な現実と完璧な幻想の交差の中にのみ見出す。」と著作の中で記し、ヴィスコンティも共感したから映画にしたのだろうが、本当にそうなのか私は最近疑いを持ち始めた。
 あんなのはもうどこの世界にも無い。
 ここでの美は感情の浮き沈みと現実の痛みの中に速度を上げて突き当り砕け散る。
 まるでガラスの器を落としたみたい。
 ビデオでも確認した。 
 先週クリスタルのカフスボタンが新たに手元にやってきた。
 週末はクリスタルに決めた。
 イタリア製の生地でシャツを作った。
 左の袖ににイニシャルを入れた。
 夕食にサラダを食べた。
 朝4時だ。
 全然眠れない。