ジークフリート「鍛冶屋の歌」 ルネ・コロ

 
 今日みたいにブログばかりの時は仕事が無くて暇な証拠、しかも冷たい雨が大地を叩きつけている。
 コロさんが東京でコンサートしたのは随分昔なのだけれど、あの時は「詩人の恋」を中心としたリートの夕べとワグナーを中心としたアリアの夕べがあった。
 この動画は最終日の東京芸術劇場オール・ワグナープロ。
 「ワルキューレ」からジークムントを2曲、「タンホイザー」ローマ語り、「ローエングリン」遥かな国に、ベーゼンドンク歌曲集から1曲、「マイスタージンガー」優勝の歌だったか、もちろん歌いっぱなしではなくてオーケストラだけの音楽を挟んで行うから、19時に始まった演奏会も予定のプログラムが終了したら21時になっていた。
 しかし!そこから本当のコロ時間が始まる。
 テレビでも放送したけれど、劇場に行かなければあの凄さは解らないだろうな。
 アンコールは合計で6曲でコンサートのお開きは22時になっていたし会場は大騒ぎ。
 オペラ以外であそこまでの熱狂は、私が体験した限りにおいてクライバーグルベローヴァとコロだけである。
 カラヤンバーンスタインの時も同じようにスタンディングでの喝采でしたが、熱狂というよりは敬意を表して拍手をしている印象で、コロの場合は熱狂の「狂」が際立っていた。
 だいたいアンコールでジークフリートなんか誰も想像していないから、この人の体力はどうなっているのだろうと不思議に感じられて、我々は世界一のワグナー歌手と思っていたし事実そうだった。
 この演奏会の2日前に宿泊されている赤坂のホテルのラウンジで本人が会ってくださり、興味深い話を聞くことができた。
 どうしてそんなことができたのか、明確な理由と約束があったから実現できたのですが、説明するのが面倒臭いというか、もの凄く長い話になるからパス。
 今思えば馬鹿みたいなのは、サインも貰わずカメラも持っていかず、何やってんだか。
 その後、いま思えば偶然なのですがドレスデンに旅行した時に「マイスタージンガー」を鑑賞できて、その時がコロさんの最後のワルターだった。
 終演後に挨拶くらいしようかなと楽屋口にむかい、そしたらゼンパーで歌うこともあんまりないみたいで地元のファンに囲まれてサイン攻めになっていて、つまりドレスデンも「狂」していた。
 12月28日で震えながら待っていたら、むこうからこっちに気が付いて「ヤー!」とか言いながら近づいてきた。
 K 「東京から来たのか?」 
 私 「そうだけれど、ケルンから電車でここまで13時間かかった。」
 K 「飛行機なら直ぐなのに・・」
 あんたはお金があるでしょうが、僕は貧しいからホテル代も削り硬いソファーの夜行列車に乗り・・とか説明できるほど語学に堪能ではない。
 K 「これからゼンパーの人たちがパーティしてくれるんだ。」
 私 「エンジョイしてください。次の日本は?」
 K 「ネキスト、タイム、トリスタン・・チャオ!」 チャオってあんたドイツ人でしょ・・
 ホテルに向かう時、風の強いエルベ川の橋の上からオペラハウスを振り返るとザクセンの栄光が見えてきた。
 ワグナーやシューマンメンデルスゾーンも見た景色かな?感慨深かった。
 貧しき生活に変化なし。
 また行きたいな。