テノール馬鹿の要素満載 情熱のマルセロ・アルバレス

 
 マルセロ・アルバレスの「カタリ・カタリ」である。
 この人は普通の歌手より上手だけれど、「だからどうした。」程度の印象しかなかったのですが、アルバレスは次世代を担う「テノール馬鹿」かもしれないぞと、ちょいとこの動画びっくりです。
 とりあえず我々オペラファンはアルバレスに感謝しなければならなくて、メトロポリタン歌劇場公演とボローニャ歌劇場公演、両方とも急遽来日し代役を務めてくれたのです。
 メトの場合は他にもスター歌手が揃っていたから何となく存在が埋もれてしまった感じでしたが、9月のボローニャオペラ「カルメン」では主役クラスが全滅したから、ホセを歌った代役アルバレスはもっと評価されてもいいと感じていた。
 思えばカウフマンがメトとボローニャバイエルン全部キャンセルし、急病との発表があったから「お大事に。」だけれど、本当にプロなら「1回くらい歌いに来い。」と言ってやりたかったが、今考えるなら「もう来なくていい。」という心境でもある。
 さて、この動画であるが、これからアンコールのシーンみたいな雰囲気でアルバレスがなんか喋りだし、それから音楽が始まる。
 本来「テノール馬鹿」はもっと突き抜ける声が必要とされるが、将来有望な馬鹿になる資質を見出した気分で満足してしまった。
 
 ≪動画から見る有望な馬鹿へと導く3つの要素≫
 ① 歌い方がやたら大袈裟で人として危ない感じがする。
 ② 左手にペットボトルを持ち途中で水を飲む。(こんな人初めて見た。)
 ③ 何故か指揮者が唸る。(この指揮者なんか変。ユダヤ教の帽子が目立つ。最後にジャンプ。誰だ?)
 
 つまり、かなり凄い「カタリ・カタリ」で聴き手は異常な世界に誘われる。
 しかも日本での代役はドン・ホセだったが、ノーメイクのアルバレスは最初から山賊みたいに見える。
 
 アルバレスは1962年アルゼンチンの生まれで、面白いのが途中まで全然音楽と関係ない仕事していて、30才の時に「歌手になる!」と決めたそうである。
 楽器と異なり歌は30才からでも大丈夫とかいう話は聞いたことがあるのですが、本当に世界的なオペラ歌手になってしまったのですから驚きです。
 素晴らしい、馬鹿の要素満載である。
 カウフマンなんかどうでもいい、アルバレスを応援しようではないか。