ビエイト演出のパルジファルはゾーン

 
 ビエイト演出のシュツットガルトオペラ「パルジファル前奏曲、指揮はマンフレート・フォーネック。
 調べるとDVDになっているみたいなので、そのうち全体を鑑賞できるだろうと少し安心しました。
 演出家は前奏曲から仕掛け始める。
 恐らく近未来のどこかなのでしょうが、途中で放射線防護服姿のような役者が現れ作業を始めるのだから、ここは震災後の福島なのかと考えてしまうくらい身近な恐怖。
 しかし、原発事故よりオペラ演出のほうが早いのですから、チェルノブイリをイメージして創作されたものかもしれない。
 ちょうど昼間に日テレの「ミヤネ屋」で現在のチェルノブイリを特集していて、原発周辺の今も危険とされる場所を「ゾーン」と紹介していた。
 ゾーンといえばタルコフスキーの名作に「ストーカー」(1979年)という映画があって、登場人物3人の男性が、地上に突然現出した危険で不可解なゾーンに禁を犯して入り込んでいく。
 ここでのストーカーという言葉は密猟者と訳されていたと記憶している。
 ただ映画の中でのゾーンは、原発事故がもたらしたとか隕石が落ちた跡だとか、最後まで明かされない。
 僕が最初に観たのは10代の頃に、たぶん名画座のような場所で、面白くてその後もビデオを購入し自宅でも時々観ていたくらい。
 ビエイトは映画からも相当な影響を受けているそうで、間違いなく「ストーカー」と「パルジファル」を結びつけたのだなと感じられる。
 未知なるゾーンは遠くの国の出来事ではなく、日本の東北地方・・もしかしたら日本そのものがゾーンに入ってしまったのかもしれない。
 僕には前奏曲の舞台が、理屈に合わないけれど、だんだんと日本の風景ように感じられてきた。
 
 ところで来月の小澤塾「蝶々夫人」は演奏会形式に変更になってしまった。
 しかも指揮はピエール・ヴァレーが大半を振り、小澤さんは2幕の2場?だけだそうで、なんだか解らないけれど、ピンカートンが帰って来る日の朝から自害するまでのシーンのことだと思う。
 ついこの前、水戸室内との演奏会でキャンセルしたことでオペラは無理だろうと想像していたけれど、「やっぱり・・」と感じてしまったから、想定内の出来事である。
 しかし、サイトウキネンや水戸と異なるのは、同じ作品を、つまり一つのオペラを途中から別の人が振るというのは、何か違うような気がしてならないのだけれど、自分の感覚が可笑しいのでしょうか。
 例えばピカソが描いた絵を途中から別の人が手を加え「ピカソです。」って発言されても納得できないように思うのです。
 一昨年のロイヤルオペラ「椿姫」みたいに、ヴィオレッタが1幕で駄目になり2幕からの代役はありそうな話だけれど、指揮者が途中で交代っていまだかつて聞いたことがない。
 公演に対する意義よりも、教育に向けられた価値を優先させる場合は良いのだろうか。
 事務局の払戻しや差額の対応、当然である。
 オペラの装置、大道具や小道具、そして照明、衣装等は日本を代表する技術者ばかりだったから支払いは大丈夫だったのだろうか。
 それとも1ヶ月前までが契約解除の期限だったのなら、劇場のスタッフはギャラを泣いたのでしょうか。
 具合が悪いなら単純にキャンセルして全部ヴァレーにやってもらえばいいのに。
 たぶん今回は同じ指揮者の方がいいと思う。
 今後小澤さんはベルリンフィルの演奏会が控えている。
 カラヤンサーカスだけではない、予定ではワルトヴューネの屋外のお祭り演奏会。
 それから松本がやってくる。