マウリッスハイス美術館展
夏休みだし混んでいるとは想像していましたが、上野のお山は大変な賑わい。一昨日の日曜日。
西洋美術館のロダンを横目に、あまりの暑さにボ~として己は「考えない人」になりかける。
「ターバンの少女」は古い題名みたいで、最近は「真珠の耳飾の少女」とか世間では呼ばれている。別にどっちでもいい。
その昔、20代後半?30歳位だったかな?僕はオランダ旅行をしまして、アムステルダムを本拠地に美術館巡りや演奏会、オペラ鑑賞をした経験があって、普段からガイドブックを見ないで動いてしまうので、行ってからアムステルダムが治安の良くない街だと知ったくらい。
自分でも何だか解らないが、あの時代の旅行は「高等遊民になるための社会的手続き」だと思い込んでいた。
駅前には危険な目つきの流れ者が多く、観光客から金を巻き上げることが当たり前みたいな日常がある。
だから、トラムに乗るとか、切符を買うとか、目的意識を明確にして行動しなければ4~5人の黒人に取り囲まれたりしてしまうらしい。らしいというのは実際に被害にあった女性からその話を聞いたので気をつけようと思ったのだ。
滞在した宿はコンセルトへボウの近くにある日本人経営のペンションで、言葉の問題が無かったので気軽でしたが、電車でドイツの数都市を回って年明けにアムスに帰ってきたら、日本から紅白歌合戦のビデオが送られてきたとかで、現地に住む数名の日本人のご婦人方が集まっていて、「ビデオとテレビの接続の仕方が解らない。助けて!」だった。仕方がないから繋げてあげた。「それでは御機嫌よう。」と自室に行こうとしたら、カッパエビセンとか歌舞伎揚げ等の日本のお菓子が出てきて、「一緒に観ましょうよ~!」と拉致監禁され、我慢しながら紅白を観た記憶がある。(ここは日本か!)あのご婦人方は何年オランダに住んでいるのか知らないが、完全に浦島太郎状態で、例えば美川憲一が何故女性のような衣装なのか?和田アキコはいつからあんなにショートヘアなのか?いちいち説明を求められ大変だった。
とにかくその旅で、僕はハーグに出掛けた。
市立美術館にあるモンドリアンが最大の目的だったけれど、駅の近くに小奇麗な美術館があったのでイン。
そこがマウリッツハイス美術館だったのですが、知らないとは恐ろしい話で、あまりに凄い絵画ばかりだから驚愕の連続だった。ヴァン・ダイク、フランス・ハルス、ヤン・ブリューゲル、レンブラントの「解剖学教義」はここにあったのか。そして、その先の部屋にフェルメールの「ターバンの少女」があった。
動けなくなってしまった。
絵画の存在は本や何かで勿論認識はしていたけれど、あんなに凄いとは思わなかった。
「デルフトの眺望」も近くにあったが、意識の全てが少女に集約された。
20分、30分、或いは1時間位その場にいたのか記憶も曖昧ですが、旅行の前後の予定等どうでもよくなってしまう感覚だった。
真冬だったことが幸いしたのか、確か美術館内に僕以外2人しかいなかったと思うから、確実に人生のとんでもない体験だった。
汚い写真をお許し願いたい。しかも微かに自分が写りこんでいる。美術館で冊子を購入し、以来自分の部屋に飾ってあるのです。
というわけで、久しぶりに再会してきました。
もの凄い混雑で、気が狂いそうになった。
それでも、「本物を鑑賞しなければ駄目である。」と結論付けたい。
魅力は「美しさ」にある。
芸術とはそういうもの。
今回は9月17日まで展示されている。
人混みが苦手だとか、お金の問題とか、時間のやりくりだとか、接することができない都合がある人もいると思いますが、少なからず僕にとっては社会的な都合を放棄してでも優先させたい作品。
感動の理由は個々に判断いただければ。