気になる音

 演奏会のことで書き忘れたことがあった。
 別にたいした事でもないのですが、こんな時でもないと気がつかないので、参考になる音源を探したら、良いサンプルがありましたのでユーチューブから拝借。
 K448の第2楽章、ブレンデルとクリーンの素敵な演奏で綺麗なステレオ録音に感じられるのですが、異議を唱えたい。
 別にピアニストの演奏が気に入らないのではなく、左からファーストピアノ、右からセカンドピアノが聴こえてくる状況が実際の舞台では起こりえない出来事だということ。
 2台ピアノの正確な並べ方は決まっていないのかもしれませんが、だいたいにおいてピアノを重ねるようにセッティングし、手前にあるセカンドピアノの響板を外し、後にくるファーストピアノの響板を立て、双方が極力均等に鳴り響くように工夫をする。
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 こんな感じ。
 実際にホールで鑑賞するなら、右も左も関係なく1つの音の波に含まれながら聴き手の耳に到達する。
 ところが、この音源に限った話ではなく、だいたいどのCDでも同じように分離して聴こえてくるように録音されている現実に奇妙な違和感を覚えるのです。
 僕が気になるのはそれだけの事で、それ以上でも以下でもなく、またどのような録音が理想的なのかにも興味は無いし、つまり別にどうでもいいのですが、ただ違うままで良いとはあんまり思えない。
 でも殆どの録音がそう聴こえてくるということは、僕の個人的なストレスなんかどうでもよくて、その道のプロである録音技師の考えに論理的な考えがあるのだろうとは感じられる。
 バレンボイムとランランのライヴ動画で同じようなピアノの並べ方なのに、ヘッドホンで聴くと左右の分離が顕著で解りやすいものも存在する。注意深く映像を見ると左右に別々のマイクが置かれているから、上手い具合に音の加工して、まあそういうことなのでしょう。
 しかしランランはバレンボイムと一緒に演奏すると、師匠の手前か余計なパフォーマンス(顔芸)が多少影を潜め丁寧に師匠に合わせて演奏をしているように感じられて素晴らしいもの。
 
 さて音なのですが、実はつい先日までなにも感じないでCDを聴いていたのですが、リハーサルやら本番やら目の前で感じた衝撃が大きすぎて、せっかくフレンチドレッシングだったのに、どんなにシェイクしても酸味とオイルが分離しつづけるような印象で非常に気持ちが悪い。
 ものは試しとアルゲリッチ盤をセットして左右のスピーカーをくっつけて鳴らしてみたら、なんとなくホールの演奏に近づいたように聴こえてきて具合が良い感じ。
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 しかしながらあまりに直接的な音だから、別にスピーカーをこちらに向けて鳴らさなくてもいいのではないだろうかと気がつき、というのもピアノの音の出所は楽器の上でハンマーがピアノ線をたたくのだから、次に仰向けにしてみようと考え、響板代わりに板を載せてみた。                           
 つまりこんな感じなのですが、既に狂ったような作業になっていることは自分でも解っている。
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 結論として驚くなかれ、最後の形がホールの響きに最も近いのである。
 音の質は、普通に置いているほうが良いに決まっているのですが、それが現実から程遠い音になってしまう以上、どのように録音技師がすぐれていたとしても、全ての人とは言わないけれど、彼らは「音楽」を聴かず、美しい「音」の録音と再生を求めているのだろうとしか今の僕には考えられないし、完全に派閥の異なる立場に存在していると思った方が良さそうである。
 ですから音響機器を開発している人たちが、本当に音楽が好きなのだろうか疑問を感じるのです。
 機械の好きな人が入社する可能性が強いとは考えられないだろうか。
 音楽好きは楽器を演奏した経験があったり、楽譜が読めなくても歌ってみたいと思ったり、知識は無くても感受性が強かったり、人を愛し傷つき街を歩いているときにふと聴こえてきたモーツァルトに涙したりするように感じられるのですが、全ては僕の思い違いなのかもしれないし、関係の無いことなのかもしれない。
 ともかくCDの音が実演と異なったと気がついた日に試してみたことでした。