ボンジョバンニ

 おはようございます。
 世間の動向と生活は比例せず今日が仕事始めである。クリスマス過ぎから休んでいたから、義務教育以上の冬休みみたいなものでしたが、全く放棄していた訳ではなく関係者とスケジュール確認したり思考していたりと色々やることはあったのだから、それを仕事と考えれば最初から休みは存在しないようなもの。それでも今朝は、例えば旅行に出掛ける日にいつもより少しだけ早く起床した気分に似た初々しさがある。
 
 先日荻窪に用事があり、帰りに新宿に寄った。改札口を出る直前にはディスクユニオンまで行くつもりでいたのだけれど、南口改札から街を眺めたらあまりに人が多く雑然としていて、あの中を歩く気力がなくなりそのままエレベーターに乗ってタワーレコードにした。一応探していたものはあるのですが、何処にも置かれていないような怪しいCDなので、そいつに出会っても出会わなくてもそれまた自分の人生だと半分諦めていたような音源。
 そういえば、タモリ倶楽部で「フルトヴェングラー生誕125年企画・・」とかいう意味不明の企画があって、マランツの試聴部屋に音楽評論家や指揮者(元オーボエ)の宮本文昭氏らをゲストに、古の時代に偶然収録されていた「音楽以外のノイズだけ」を聴くコアな番組があった。「では、フルトヴェングラー指揮のベートーヴェン交響曲弟9番から足音をお聴きください。」それだけで笑ってしまうのですが、知らなかったのはCDの帯に「足音いり」なんて書いてあるのは日本だけで、欧米では音楽と関係ない足音なんぞカットされているらしく、考えてみたら、うつろいゆく時空や一期一会に美意識を見出す日本的文化と関係があるのかもしれない。ちなみに僕は肯定も否定もしないけれど、こんなもの必要がないと言い切れるほどドライでもない。そのあと番組ではクレメンス・クラウスがニューイヤーで指揮したときの拍手や、ギーゼキングで劇場の外から聞こえてくる大砲の音が紹介されていたけれど、一番驚いたのはミケランジェリが演奏する「皇帝」終楽章のピアノソロが終わりそうな静かなシーンで雷鳴が鳴る。あれは凄い。さすがミケランジェリである。番組はyoutubeで視聴できる。
 タモリ倶楽部の企画は単なる偶然の寄せ集めなのだが、一概に偶然とは言えないと僕は思っている。
 五輪中継で活躍されたNHKのアナウンサーが他界されたが、名アナウンサーが担当すれば歴史的な出来事が起こる。つまり偶然かもしれないけれど最初から名アナウンサーが選ばれているのである。例えばF1でセナが事故死したときが三宅アナだったとか幾つかの事例を思い出す。
 長くなりましたが、以上は前置き。
 タワーで探していたCDが見つかり購入した。マルティヌッチのオペラアリア集である。
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 このCDではありえないくらい凄い歌が聴ける。以前、同書庫「テノール馬鹿」で動画サイトで見つけたアンドレア・シェ二エの「ある日青空をながめて」を紹介したのですが、どうやら音源はこれみたいで、3大テノールやカウフマンもフローレスも小さく感じられるテノール馬鹿全開のアリアばかりが収録されている。なんと2枚で44曲で全てがライヴ。
 どうしてこれが欲しかったかというと、どう考えても客席からの隠し録りにしか聴こえてこないから、ちまちまスタジオで録音して編集した内容ではなく、マルティヌッチの超絶的な高音でスピーカーが壊れそうにビリビリ鳴るから、こりゃたまらん。たぶんカセットテープを使用したとしか考えられないのは、時々ビィヨーンとした奇怪な音やイタリア人特有の歓声拍手で全体的にも生々しいノイズだらけで理想的。
 つまり、これ海賊盤としか考えられない。
 ブランドは「BONGIOVANNI」・・ボンジョバンニ?冗談としか思えない一度耳にしたら忘れられない名称である。
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 調べてみたら、1905年にボローニャでフランチェスコ・ボンジョバンニにより創始されたみたいなのですが、きちんとした会社なのかわからん。HPを読んでみたら、見たこともないようなCDやDVDが入手できるようです。
 ということで、慌てなくても誰も買わなかったでしょうが、これも出会いだったのでしょう。心が豊かになれた気分です。