鎌倉芸術館ゾリスデン結成20周年記念コンサート

 2013年の初演奏会鑑賞。しかも日曜日のマチネは僕には珍しいこと、1月13日(日)15時~鎌倉芸術館
 鎌倉芸術館、昔は松竹の大船撮影所のあった場所で、高校生の時にドサクサにまぎれて進入したら「男はつらいよ」の撮影していて関係者に見つかってしまい逃げ出そうとしたら、「あー、そこの君。その木材を持ってきて。」と言われ、そのまんま夕方までアルバイトのようなことをして5,000円貰ったことがある。帰るときにタコ社長に「おつかれさん!」と声をかけられた。
イメージ 1
 芥川也寸志 弦楽のための三楽章〈トリプティーク〉
 ヴィヴァルディ 《和声と創意の試み》op8より〈四季〉
 ヴァイロリン・ソロ 春:礒恵里子 夏:小林美樹 秋:漆原朝子 冬:漆原啓子
 ~休憩~
 ピアソラ 編曲:デシャトニコフ ブエノスアイレスの四季
 ヴァイオリン・ソロ 徳永ニ男
 
 鎌倉芸術館ゾリスデンは1992年に徳永ニ男さん(当時N響コンサートマスター)中心に結成され、毎年活動を続けてきた団体。今回の出演者は以下の豪華なメンバー。
 [ヴァイオリン] 礒恵里子、漆原朝子漆原啓子、川田知子、小林美樹、徳永ニ男、三浦章宏、水谷晃
 [ヴィオラ] 安藤裕子、川崎和憲、須田祥子  [チェロ] 向山佳絵子、富岡廉太郎 
 [コントラバス] 赤池光治、吉田秀  [チェンバロ] 小森谷裕子
 とにかく素晴らしいアンサンブルで驚いてしまった。昨年から素晴らしい演奏会ばかり聴いている状況はまだ継続しているようで、御神籤でいうのなら完全なる大吉。
イメージ 2
 ヴォルフの弦楽作品なんて初めて聴いたけれど大変に好ましく、新年最初に聴いた実演が半音階の独特のリズムを刻む音楽というのもお洒落な出来事かもしれない。何時だってちょいと不健全な陰を感じる歌曲を聴きたくなったり、これが欲しいと目的もなく中古レコード屋さんで片っ端からチョイスしている時に気がつけばヴォルフやらレーヴェの廉価盤。電車に乗って本を開けばハイネやゲオルゲ詩集になっている現実。例えば初対面の音楽愛好家に対し「わたくしはヴォルフが好きです。」なんて言わないほうが良さそうな感じがあるけれど、プログラムノートには「春の足音を感じさせるような新春にふさわしい」と書かれている。でも表題から我々が勝手に想像してしまう「君を知るや南の国」はからっとした光ばかりではなく、もう少し陰湿な自然と混ざりながら上昇するのではないのかしらんと考えた。事実お天気が続いていたからマッチを擦れば何処でも火事になりそうな異常乾燥注意報だったけれど、今朝窓を開ければ雨が降っているから実に心地よい日本的湿度。つまりこのお天気は絶対にモーツァルトなんかではない。そんな馬鹿みたいなことを考えながら聴いている人はあんまりいないだろうな。とにかく僕の春はヴォルフで始まった。
 芥川也寸志さんの〈トリプティーク〉も初めて聴いた。ショスタコーヴィッチみたいでラヴェルにも似ているなんて書いたら怒られるかな。そういえば昔ホテルでアルバイトしていた時に芥川さんにウイスキーの水割りを作ったことがあって、テレビと同じ優しそうな紳士の笑顔だったけれど、その数ヵ月後シノーポリの演奏を鬼のような表情で聴き入っている姿を見た。僕はP席で巨匠はS席だから気がついた。次は新聞の死亡記事だった。どちらが本当の芥川さんだったのだろう?と時々考えた。たぶん両方があの人だけれど、聴きながら鬼を思い出した。第1楽章が終わったときにパラパラと会場から拍手。(恥ずかしい・・仕方がないか・・日曜マチネ・・ここは鎌倉・・)
 それからヴィヴァルディ「四季」だった。今更だけれどつくづく名曲だと感じた。季節ごとにソロのヴァイオリンが交代するパターンは初めて。面白いと思った。はっきりしているのは季節を追うごとにソロが上手になっていったことで、鎌倉出身の春と夏の奏者を聴きながら「早く秋にならないかな」だったけれど白眉は冬に訪れた。僕は漆原啓子さんのソロに不覚にも感動してしまった。彼女は素敵だ。魅力について書く気力がないので端折りますが「クールなのにエロティック」とだけ記しておきたい。帰宅してから彼女のF・Bにコメントしちゃったのだからミーハーな俺。
 休憩時間をはさんで最も楽しみにしていたピアソラブエノスアイレスの四季」
 哀愁の音楽は徳永さんの独断場。こういう作品は人生経験を重ねた大人にしか表現できないのではないと思う。もう滅茶苦茶かっこいい!クラクラした。タンゴやジャズの要素が加わる音楽だからなお更感じたのかもしれないけれど、CDとかでは音楽は伝わらないのです。書を捨てよ街に出よう。
 夏・冬・秋・春の順番で演奏されたのは恐らく論理的発展があるのでしょう。
 そういえば僕の席は2階の後から2列目だったけれど、ピアソラの時だけ座る席を間違えてしまったみたいで気がついたら1階の真ん中辺りで聴いていた。
 繰り返すが、素晴らしく緻密なアンサンブルはそうやたら聴けないと思いました。
 僕が買ったB席は2,000円、こんなに安くていいのでしょうか。
 
イメージ 3
 いつのまにか鎌倉も大雪です。