カプリッチョ

 R・シュトラウス歌劇「カプリッチョ」のレコードを買いました。
 伯爵夫人マドレーヌ(未亡人)エリザベートシュワルツコップフ 伯爵(兄)エバーハルト・ヴェヒター フラマン(作曲家)ニコライ・ゲッタ オリヴィエ(詩人)フィッシャー‐ディースカウ ラ・ローシュ(演出家で劇場支配人)ハンス・ホッター クレーロン(女優)クリスタ・ルートヴィヒ・・・サヴァリッシュ指揮のフィルハーモニア管弦楽団
 面白いのはEin Diener(一人の召使?)がWolfgang Sawallischと書かれていて、そういえばマエストロは元々歌手だったと何かで読んだ記憶があったな。
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 このオペラは今までは2種類の演奏しか知らなくて、1つはベームバイエルン放送と録音したCDでヤノヴィッツやディースカウやプライなんかが歌っている。(ベーム盤でのディースカウは伯爵役)
 それと2~3年前に二期会公演で日生劇場で鑑賞したことがあって、指揮者もオケも忘れてしまったけれど、佐々木典子さんの伯爵婦人が素晴らしかった。詩人オリヴィエ役が知り合いだったので期待と不安の奇妙な気持ちで出掛けたことを記憶している。
 断片では最近ならシェーファーのCDでの最終場面、昔ならドレスデン・シュターツカペレのアンコールで「月の光の音楽」が印象深い。
 僕にはその程度の知識しかないから作品の良し悪しを語る資格もないが、サヴァリッシュ盤を聴いてみて随分とお洒落なスタイルに感じられた。つまり録音としては新しいのにベームが古臭い(笑) 新しいといっても1971年の録音だから大昔の出来事なのだけれど、例えばテレビでいきなり昭和な映像が映し出された感覚とでも表現したらいいのかもしれない。別にそいつを否定しているのではなく、社会的評価はベーム盤の方が高いとは思う。ただ、大阪万国博覧会の翌年に当時のファッションに身を包み、時代最先端の特徴的なお化粧したヤノヴィッツがレコーディングのためにミュンヘンに出向いた光景が見えてくるような感じがするのです。香水はシャネルの5番?別の表現するなら三越の1階のイメージ。
 
 先日神保町で1968年のレコード芸術を100円で買ったら、「カイルベルトの死を悼む」なんて書かれていて興味深い。
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 しかも↑な宣伝も<本年度音楽界、最大の話題・・・全世界に一大センセーショナルを・・・>
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 <for the Excellent Young!ビートがえぐる!「原音」がチャレンジする!>意味不明なコピーはビクター。
 原音と書いて「ナマ」と読む。ヤングって凄い言葉だな。
 
 どうでもいいけれど、この雑誌の3年後にベーム達はレコーディングした。サヴァリッシュは1957年から1958年にかけて録音している。ふと思ったのは、作品の初演からそんなに年数が経過していないということ。
 R・シュトラウスクレメンス・クラウスとオペラの表題について意見交換している時期が1940年11月という表記を見つけた。作曲家は、Die Sprache der Tone「音の言葉」或いは、Wort und Ton「言葉と音」と提案したけれど、クラウスは「CAPRICCIO」とすることで、前作の「インテルメッツォ」と対になる理屈を導き出した。完成したのは1941年8月3日、初演はクレメンス・クラウスの指揮で1942年10月28日(バイエルン国立歌劇場)・・なんとオリヴィエ役はハンス・ホッター。レコードの人が出演している。ちなみにウィーンの初演は1944年シュトラウス生誕80年祝典の3月1日にベーム指揮で行われた。ザルツブルク音楽祭ゲッペルスの命令で中止された年でもある。
 
 伯爵夫人 ≪あの人たちはオペラの結末を見出すのに、ありきたりでない結末があるのでしょうか?≫
 家令 ≪夕食の準備が整いました。≫
 
 夫人は鏡の中の微笑む自分を見つめ、鏡の中に手招きをする。御礼とともに典雅な立ち居振る舞い。それから陽気にソネットを口ずさみ食堂に入っていく。
 呆れ顔の家令は夫人を見送り、それから鏡を覗き込む。(もしかしたら、この役がサヴァリッシュかな?)
 指揮者によってそうとうに異なる音楽になりそう。
 小さなキャンドルの炎のような変ニ長調の美しき和音がフッと消える。
 お仕舞い。