サロネンの演奏会 2月8日サントリーホール

 エサ=ペッカ・サロネン指揮、フィルハーモニア管弦楽団演奏会
 ベートーヴェン 劇付随音楽「シュテファン王」序曲
 ベートーヴェン ピアノ協奏曲第4番 ピアノ:レイフ・オヴェ・アンスネス
 アンコールはソナタ22番の第2楽章
 マーラー 交響曲第1番「巨人」
 アンコールはシベリウス「悲しきワルツ」
 2月8日19時開演 サントリーホール
 
 17時30分頃、脳を覚醒させるべく「銀座らんぶる」でスマトラのダブルをデミタスカップ
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 良いエネルギーにしても、負のオーラにしても、日常生活とは無縁な刺激を体験すると疲労困憊。まして2日続けて演奏会に行くとなればなお更。聴いているだけで筋肉痛になるのに、サロネンはどうしてあんなに元気なのだろう。(2月7日初台で演奏会、8日銀座Appleでアプリについて語る、夜は赤坂で演奏会、9日横浜でシンポジウムと演奏会、10日池袋で演奏会。)世の中には働きすぎて過労死する人もいるのに、マエストロに関しては無縁なのでしょう。
 とにかくパワー全開の音楽を聴いてしまった。
 
 開演前2階エスカレーター前あたりでグラゴルミサさんと遭遇。
 「こんばんは。」と声をかけたら、「堀内さん、今日のプログラムなんでしたっけ」と衝撃的なお言葉。グラゴル先輩は日々忙しくお仕事されていらっしゃるのに、過労がなんのその、昨年75回も演奏会を聴かれ、しかも不思議なことに激しい曲だけに安らぎをお感じになるのだから、サロネンの公演に対しては「巨人」と「春祭」とだけ記憶していた様子でした。
 グラゴルさんは、休憩時間に「素晴らしいですね。こりゃ後半のマーラー聴いたら泣くな。凄い演奏だったらアンコールはしないでもらいたいな。悲しきワルツなんてやったら笑っちゃいますね。」と言いながら、アンコールが本当に「悲しきワルツ」だったからずっこけそうになりました。
 
 最初の「シュテファン王」序曲は初めてなので調べてみたら、ベートーヴェンが1811年にハンガリーのペスト劇場杮落としのために依頼され作曲したそうです。シュテファンとはハンガリー公国のイシュトヴァーン1世のことで(ドイツ語でシュテファン)997年~1037年まで首長を務めた実在の人物。正式名称は「ハンガリーの最初の恩人シュテファン王」だそうで、序曲+9曲で構成されている祝祭劇。その気にならなければ全曲なんて一生聴くことがないように思う。でも雰囲気のいい音楽で個人的には好ましく感じられた。なんでサロネンが取り上げたのか不明だけれど、作曲されてから約200年で、シュテファン王の時代から1000年だから、その祝祭とか適当に想像しながら聴いた。ちなみにハンガリーのイシュトヴァーン寺院には本人のミイラが展示されている。差し詰め日本なら平安時代だから藤原道長のミイラとかになるのでしょうか。
 ピアノ協奏曲は前日に続いての鑑賞でしたが、ラッキーなことにピアニストの指から真正面のP席だったので、景色が面白く夢中になってしまった。アンスネスの演奏は本当に素晴らしい。それにしてもただ上手な演奏だとかじゃなくて、マエストロとの協調性以上に色々なものが感じられてくる。アンスネスにしてもサロネンにしても、互いの技術を尊敬していて・・突飛な考えだけれど「責任ある結果の達成を優先させる暗黙の了解」が存在しているように感じられてくる。現実的には事務所のマネージメントやらスケジュール管理等のややこしい大人の事情があるだろうけれど、彼らの思考する関係性は限りなく無償委任の世界に導かれる。とか書きながらワンステージ幾らのギャラが振り込まれるのか知らないけれど、舞台上でのアンスネスは常に高尚でなければならない道理が働いている。生で聴けば解ってもらえると思うのだけれど、いつだって自分で築き上げたポジションにミスは許されないし考える力が試される。だから「神経質なベートーヴェン」と感じた人もいるのかもしれないし、「こんな名演は初めて聴いた。」という人もいるのではないでしょうか。僕は彼らの望んだ世界に一票を投じたいし、ホール入口で大量に受け取るチラシを見れば購買意欲を感じる演奏会の少なさにがっかりしてしまう。なんでもう一歩前に進んで高みからの景色を見ようとしないのだろうか?等と考えてしまった。
 後半のマーラー「巨人」・・こんなに夢中に聴けるとは。あっという間の1時間だった。指揮姿がダンスみたいで聴くというよりは観ていたのかもしれない。
 聴こえるか聴こえないかのPPP、独特のアクセント、表現の幅、過去にない独創的な世界観、良い意味でテンポが揺れる、高度な技術を披露するソリストに対しての慈愛に満ちたサロネンの配慮。ラストの爆音は高速サロネン。目の前がシンバルとバスドラムだったから理想的な音楽が感じられない場所だったのかもしれないけれど、ここまでやられたら否定しようがない。
 驚いたのはバスドラム前に後頭部の金髪の少女?(顔があっちむいているから何歳くらいなのか?)が主席ホルン奏者みたいで、ほぼ完璧な演奏。終演後にサロネンは真っ先に彼女のもとに走りよりハグしていた。
 これはクラシックじゃない。ロックである。
 スタンディングでの喝采。後から肩をたたかれて振り返ると、とむさんが笑顔で立っていた。「凄い!きて良かった。」それで「そこがs○lonenさんよ。」不意を突かれて驚きました。目の前の席の男性と視線を合わせ「はじめまして・・」
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 グラゴル先輩と話しながらホール出口でご挨拶。「では次回ぐるぐるで。」周囲には意味不明。
 歩き出してから、やっぱり顔見てから帰ろうかなとユーターンし楽屋口に行きました。暫く音楽は聴かなくても生きていけそうです。