名曲のたのしみ 吉田秀和 第1巻 ピアニストききくらべ

 仕事帰りに、買いたいものもないだろうけれど掘り出し物でもあればと藤沢タワーレコードに寄ってみた。
 ここは都内と違って極端に欲しいCDが少なくて、特に最近はジャズが徐々に勢力を広げてきていて、クラシックなんか一列のコーナーしかないのだからとても悲しいお店。
 それでもレコード屋が一店舗もない鎌倉よりはまだいいかもしれない。
 少し前までは鎌倉駅の近くに新星堂があったけれど、マリア・カラスの横にリチャード・クレイダーマンが置かれていたから、無くなって清々しているが。
 それで、藤沢のタワーレコードでこれを見つけた。
 「名曲のたのしみ、吉田秀和 第一巻 ピアニストききくらべ」
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 最初は「どうせ読んだことがあるものだろうな」なんて思いながらパラパラ捲ったら、先生がNHKFMでお話されていた番組がそのまんま本になっていたのだから驚いてしまった。例えば176頁にはこうある。
 「こんばんは。名曲のたのしみ、吉田秀和です。今夜はポリーニの演奏したブーレーズだとか、ウェーベルンシェーンベルクといったようなものをきこうと思うんです。」
 先生の文章は素晴らしいのだけれど、あまりに懐かしい脱力していて何となくぶっきらぼうな喋り言葉は、とても文化勲章を受章した評論家とは思えない「・・だとか・・」や「ようなものをきこうと思うんです。」であり、どこかの章の最後の部分なんか「じゃ、また。」だから、スタジオでのお話が文章化された面白みは独特の雰囲気である意味衝撃的。3,200円税別。ちょっと高いなと躊躇したけれど気がついたら買っていた。
 何故ならば、この本にはCDが付録になっている。しかも[CDに音楽は収録されていません]と書かれている。
 まだ聴いていないけれど、CDには先生の語りだけが録音されているということ。
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 その昔僕が中学校に通っていた頃からか、毎週「名曲のたのしみ」を聴いて音楽を覚えていった。あの時は先生のお喋りが邪魔に感じていて一生懸命音楽だけをカセットテープに録ろうと努力していたけれど、いつからか先生のお話だけを録音しておけばよかったなと後悔していた。
 たぶん同じように考えていたのは僕だけではないから、こうした本が出版されたのだろうな。
 
 
 シリーズは続く。生きる喜びが増えました。
 第2巻「指揮者を語る」 6月25日発売。