リゴレット スカラ座公演 9・11

 9・11 オペラ的な一日だった。そこから始めたい。
 
 
 マントヴァ公爵 ジョルジュ・ベッルージ
 リゴレット レオ・ヌッチ
 ジルダ マリア・アレハンドレス
 スパラフチーレ アレクサンドル・ツィムバリュク
 マッダレーナ ケテワン・ケモクリーゼ 
 指揮 グスターボ・ドゥダメル ミラノ・スカラ座管弦楽団 同合唱団 同バレエ団 他
 演出 ジルベール・デフロ 
 15時~ NHKホール
 
 
 心優しいブログ友達の心優しい友達が発売日に奇跡的に獲得されたF席をお譲りくださった。
 まるで子供のように電車の中で何度もチケットを確認しながら渋谷に向いました。
 席は少し左よりの後から3列目。(F席は最後列だと思い込んでいた。)開演前に密かに撮影した写真を見ると随分とステージが遠くに感じられるけれど、考えてみればいつもこの辺りなので慣れている。実は何故か僕の左横の席が空いていて、1幕の途中から移動して鑑賞。理由は和服の帯の問題。はなっからオケを観る意識はないけれどヌッチが観えないのは大問題。意味ご理解いただけますでしょうか。
 しかし、スカラ座の公演に来られない事情を抱えたF席の住人もいる現実とは何があったのだろう?
 それで思いだしましたが、ブログと関係ない唯一のオペラ好きの友人が「さまよえるオランダ人」に来なかったことがあって、あの時は序曲を聴きながら思考し、俺は4つの理由を導き出した。
 ①死んだ。 ②上野と渋谷を間違えた。 ③酔っぱらって彷徨っている。 ④会社が倒産した。
 翌日友人から電話があり「会社が倒産した・・」答えは④だった。
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 デフロのプロダクションは1994年だけれど、ここ20年の中では最も成功したものではないかなと感じられるのは、出演者の誰もが馴染んでいるように見え聞こえてくるから。それにフリジェリオの美術が豪華絢爛!これぞスカラ座、兎に角目にご馳走なのである。
 ただ今回は、個人的にヌッチに対しての思い入れが大きかったから、開演まではそれ以外のことにあんまり期待していなかったけれど、始まってみたらスカラ座はやっぱりオケも合唱も素晴らしい。素直に感動した。
 それと一番最初のマントヴァ公爵<Questa o quella…>が聴こえてきたとき、澄み切った青空に輝く太陽のようなイタリアの声を忘れかけていたと気がついて「ああ、ヴェルディ!」 ただ直ぐに高音で大丈夫かな? でも小生は最終的にベッルージに満足した。「お見事です。素敵です。」と大人な拍手。つまりブラヴォー程ではない。
 ヌッチは本当に70代なのだろうか?あと10年くらい平気で歌い続けるような気がするし、評論家がグルベローヴァとかに「年齢を感じさせるものの素晴らしい」とか書いたりしたけれど、そういう肉体的な衰えとは無縁で、ことに歌唱上のリズムの刻み方とブレスの取り方で感じられる脳の機敏な働きに驚かされたから、言葉は可笑しいけれど、寧ろ進化しているような印象を持ってしまった。
 特に脳の働きに着眼したいのは、昨年リサイタルで聴いた時には気がつかなかったですし、それは各種アリアばかりだったからでしょうが、逆に考えたら、あの時アンコールで取り上げた<Cortigiani vil razza danata・・>「悪魔め鬼め」は、想像だけれどヌッチの「理想の形」のような気がして、それで今日のは憎しみの表現の向こう側で「どうだ!凄いだろう。」とラテン気質の笑顔が見えてくる。
 というのも、ドュダメルのテンポが全体的に速くて、ベッルーシやアレハンドレスなんかコンマ数秒遅れてしまう箇所が点在して、失敗とまでは思わないけれど妙に目立って気の毒に感じてしまったのです。あれはマエストロの過度な自己主張なのか、歌手の力量不足なのか?
 上記アリアはこれまで聴いたことがないくらい高速な出だしなのにヌッチは完璧に対応、音楽と言葉の調和の素晴らしさに惚れ惚れした。今思い返してみると、ヌッチは加速に従順だったにも拘らず、最終的に<Pieta sinore・・Pieta>まで進んでみれば主導権が逆さまになっていたから、若きマエストロはまだまだとも感じた。
 もう一人の主役アレハンドレス。ジルダ役に関してだけは、初日にモシュクが聴けたとむさんがうらやましいです。一生懸命歌っていたけれどビブラートが激しくて、気になって気になって。
 でも二幕の二重唱はカーテンコール時にアンコールで歌ってくれて盛り上がりました。嬉しかったです。
 それからスパラフチーレ役のツィムバリュクはいい声だった。
 あ~あ、終わってしまいました。
 
 
 
 
 
 
 
 帰宅してテレビ点けたら、震災から2年半と古館さんがお話されていました。
 そしてアメリカの同時多発テロから12年。
 ちなみに「リゴレット」が作曲者自身の指揮で初演されたのは、1851年3月11日だそうです。
 それから162年と6ヶ月経過した9月11日にスカラ座が東京で「リゴレット」を上演した。
 ヴェルディ生誕200年の秋。