ドリップ珈琲(ペーパーフィルター)

 珈琲を美味しくいれるにはどうしたらいいのか。
 絶対にこの方法というようなマニュアルは存在しないけれど、注意深く生きていれば幾つか美味しいカフェに遭遇するもんで、なるべくカウンター席に座ってマスターがどのように一杯の珈琲を抽出するのか観察すれば答えに近づけるような気がする。人生全部真似から入ればいい。
 以下、素人の個人的な見解なので、専門家がネットで公開されている方法を参考にする方が良いかもしれません。ただし豆選びはとても大切。
 単純な豆選びのコツ
 ①焼きムラがなく形状がそろっているもの。つまり職人がハンドピックしているかどうかということ。
 ②可能であれば自家焙煎の専門店で購入すること。ここまではだいたいの珈琲好き共通の考えだと思います。(ちなみに写真はブラジル山口農園の珈琲です。)
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 ①のハンドピックは重要だと感じているのだけれど、悲しいかな作業をしていないお店の方が圧倒的に多い。
 綺麗な仕上がりだと「雑味が少ない」のです。
 ②自家焙煎については様々な意見があるから、文章にも半分くらい責任が持てないけれど、スーパーやチェーン店の豆はいつ頃焙煎したのか分からないし、それでも美味しければ幸せでしょうが、お湯を注げば焙煎の新しさ古さは直ぐに判断できます。古い豆は水分を吸収しないのでストーンと下の器に落ちてしまうのです。新しい場合は粉状の豆が膨らみ香りが開く。和食の出し汁と似ているように感じていて、パックの鰹節と最高級を削ったものの違いみたいなものだと思う。あと、焙煎したばかりが美味しいと彼方此方で言われているけれど、僕の感覚では、最初のうちはかなりスモーキーで、3日目くらいから香りに大きな変化が生じてくる。もしかしたら一週間経過した頃が具合が良いのかもしれない。煙草なら葉巻がフィルター無しのピースとなり、最終的にメビウスに生まれ変わる雰囲気。つまり考え方を柔軟にするなら、毎日味と香りの変化を楽しむことができるともいえる。保存は必ず冷蔵庫。長期保存の場合は冷凍庫。 
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 ということで豆を挽く。このときのポイントは急いで回さないこと。何故なら刃に摩擦熱が加わると味の劣化に関係してしまうので、ゆっくりと同じテンポで「おいしくなーれ、おいしくなーれ」の俺。カルロス・クライバーではなくチェビダッケのイメージでしょうか。豆の細かさ等の説明まで書き出すと大変なのでここではパス。
 先日入手したコーノ製のミルは素晴らしい性能で、ほぼ均等の大きさの粉になる。しかし、たまたまきちんと機能するミルだったから良かったけれど、新品を買うとしたらザッセンハウス製品に何となく憧れている。
 哀れ使用されなくなったカリタは戸棚の中。 ペーパーとドリッパーはコーノの円錐形。これ最高。
 お店で挽いてもらう人もいるけれど、少しでも拘りたいなら飲む直前に必要な分だけ挽くことが鉄則。その瞬間から劣化が進んでしまうのです。
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 お湯の注ぎ方も注意が必要。一番の問題点は温度で、これも様々な考えがあると思うけれど、沸騰した直後のお湯は雑味の源のような感想を持っていて、豆を買っている店主が言うには86度がベストとのこと。
 僕はそこまで神経質ではないのでいちいち計測していないけれど、だいたい86度かな程度で作業に入っています。ポットは注ぎ口の細い専用のそれを推薦いたします。ポタポタ一滴ずつ中央めがけてお湯をたらす。たらす角度は垂直にして豆にお湯を吸わせる感覚。ペーパーが円錐形状であることを意識しながら、センター500円玉程度だけに狙いを定める。
 「こうもり序曲」を指揮しているとき(指揮したことないけれど)オーボエ奏者が美しい女性だったとして、あのソロのシーンで奏者の目を見ながら指揮棒はハートを狙う雰囲気だろうか。もはや意味不明かもしれないが、僕はそんなイメージ。
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 そのポタポタ作業をいつまで続けるか?これはここ数ヶ月で随分変化してきた。最初のうちは全体に水分が馴染んだあたりでお皿で蓋をして2分~3分放置。豆の芯まで湿り気をふくまる工夫をしていた。この方法は名古屋のマツヤ珈琲を真似たスタイル。ただ最近作業工程を変えたくなり、その日の気分で異なるが、200mlの珈琲を作る場合は50ml程度抽出するまでポタポタを続けている。どちらの方法にしても雑味の天敵である豆内のガスを抜くメリットがある。例えば声がイガイガしているマンリーコが「今日の調子だとハイCが出ないかもしれない。どうしよう。」と不安を抱えながらも、合唱の部分で演技をしているふりをしながら客席にお尻を向けて、誰にも気がつれないように「ゴホン!」と咳払いしアリアの最後に備えるようなもの。
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 豆の量は好みの問題だと感じています。専門メーカーの説明を読むと、2杯には20gとあるけれど、どうしても薄いから毎回濃くなってしまいます。それから、1杯分ドリップする場合より、2杯分ドリップした方が香りが高く濃くがあると気がついた。 ソロよりも四重奏の方が立体的に聴こえてくるような違いなのでしょうか。
 そして下の写真のように、50ml以降はポタポタを止め多めに注ぎ始める。
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 前後に軽く動かしながら抽出を心がけますが、お湯がペーパーにだけは触れないようにセンター中心が基本。
 予定の分量になったところで、急いで上部分は捨てる。(↓みたいに別のコップにのせてしまう。)
 豆から出てくる泡は灰汁だろうから、鍋料理の灰汁取り作業と同じ理論なのだと考えています。
 グレン・グールドが「一階席のセンターで妥協しなくてはならないから、舞台に立たない。」と言葉にしましたが、珈琲にしても同じ、自らS席を演出するのです。
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 本と音楽と珈琲があれば、豊かな時間が訪れます。
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 あくまで個人的な見解ですし、もっと美味しくする方法はあると思います。
 
 「報告」 ヤルヴィのフィデリオお蔭様で売れました。