credo
先日購入したグリモーのCDで最も期待していなかった「credo」・・実に興味深かった。
この録音は2003年の演奏だから、時流に乗れなかったなのだなと悲しい気分。
詳しいことは分からないけれど、グリモーとサロネンのDG移籍第1弾がこのCDとのこと。
とても売れるとは思えない収録曲が以下。
コリリアーノ ソロ・ピアノの為のファンタジア・オン・スティナート
ライヴ録音らしい。
「アミューズはフランス産の生ハム」
ちなみに国内盤にはボーナステイクとしてバッハ平均律の最初のあれが収録されている。僕が買ったのは輸入盤だからぺルトでおしまいだけれど、無くてもいいと思うのは「クレド」はバッハの主題が引用されているから。テリーヌの「オレンジ色はなんだろう?」手前のパプリカはともかく、中央の人参が微塵切りにした集合体で思いもかけない食感に驚いた。サプライズとまではいかなくても聴き手が感じ思考する余白は大切だろうし全てのからくりを説明してしまっては面白くない。
そういえばDGサロネン第2弾は自作自演で(演奏会で数曲聴いているけれどCDは所有していない。)DGってそういうブランドだったのかな?どう考えても更にマイナーな企画だし、少なからず売ることだけを考えている日本○ロンビアよりマシということでしょうか。
「前菜は鎌倉野菜のテリーヌ」
コリリアーノ「ソロ・ピアノの為の・・」は名曲だかなんだか知らないが、導入に相応しい静かな緊張感があって、ベートーヴェン交響曲7番2楽章の主題が聴こえるとき、ブロンドヘアーの見え隠れする首筋から何故か男物の香水を嗅ぎとるような奇怪な幻覚。(幻臭?)印象としてはA・D「サムライ」なのだけれど、俗っぽいながらも鋭い主張が感じられ、日本人が無色透明だとしたら欧州独特の煙のように目に沁みる体臭とでも表現したい。どちらかというと良い匂いに所属する。例えば経験したことのない出来事、或いは訪れたことのない場所なのに懐かしくなる気持ちに似ている。でも全て僕の妄想。
演奏しながらグリモーはなにを考えていたのやら。「物欲を捨て去り素直な心情のまま理想を夢見る」ように聴こえてくるけれど、実情として「税金を払い忘れていた」とかかもしれない。しかしながらコリリアーノからテンペストへの移行は実に感動的。飛躍ではなく同じ世界が継続していると考えるべき。それと同時に17番は馴染みある旋律だから、ようやく等身大のグリモーが見えてきた気分でもある。彼女は技術至上主義ではないので、もっと上手な奏者がいると誰かが言うかな?しかしそんなことはどうでもいいじゃない。時間軸の反転?コリリアーノの模倣がベートーヴェンのような錯覚。終楽章はよくある甘ったるさがなくて加速する。「こりゃ、ええ!」独創的なテンペストがここにある。
そして、楽聖ベートーヴェン最大のどうでもいい作品「合唱幻想曲」なのですが、想像以上に面白く鑑賞。でも、素直に変な曲だな。お好きな人もいるだろうけれど何処に進んで行くのか訳のわからない音楽は限りなく精神に悪影響と感じられてくる。もし名曲ならば人件費がなんのその、もっと頻繁に演奏されているはず。
それでも、やっぱりサロネンの明晰な解釈には「かっこよさ」があって、だいたいCDなんかだと上手いこと加工してそれなりのものに仕上げるものですが、どうやら僕は勘違いしていたようで≪デジタルって素晴らしい≫と感じてしまった。そして密室の技術作業を差し引いてもスウェーデンの団体はかなり凄い。
僕はFBでサロネンとグリモーをフォローしていて(実はPヤルヴィも)ツィッターなんかにしても頻繁に更新するから、さほど深い理由はないけれどリアルタイムで刺激が誘発される。五輪中継で皆が大騒ぎしている意識の高揚を彼らは芸術の分野で自発的に表現する。様々な配信ラジオや動画にしても同様。
そう考えるとCDを必要としなくなる日は近い。だって生中継でフィギアスケート観なければ意味がないでしょう。
「神戸牛のステーキ(部位は忘れた)エシャロットのソース」
ぺルト「クレド」
クレドとはラテン語で「信念」「志」或いは「約束」という意味だそうですが、どれもこれも相応しく感じられないのは、たぶんこれは宗教音楽で祈りに近いピュアな精神性が表現されている。でも偶像崇拝とは異なり、寧ろ宇宙空間に放り出されたような無力な感覚で、それでも孤独で寒々しい雰囲気ではなくて自愛に満ちたそれだから、死せる魂の復活に期待するよりその場に留まることも悪くないような雰囲気。
僕はぺルトわりと好きかもしれない。
誤解されると混乱するが、外資系有名ホテルのサービス形態で使用されているクレドは企業の拠所になる行動規範と経営理念云々。個人的にあの手の出過ぎたホスピタリティに嫌悪感を覚えるのは「誰か女性にオモテナシしたい」とすると、シャンパンやフルーツが客室に届いていたり、ケーキに愛を語るメッセージプレートと花火。(恋人や奥さんに自分でやるならいいが)挙句の果てに従業員が歌いだしたりする。馬鹿か!
つまり「お願いだからほっといてくれ!」である。
だいたいクールなサロネンとグリモーがそんなことするはずないから、万が一興味を持たれた人がいたら安心してバッハの主題が優しく手招きする現代音楽の世界にお入りあれ。
作曲技法等に関してはどうにもこうにも知識が浅く書けない。残念であり悔しい気持ち。
お料理の提供は大船の「シェ・ケンタロウ」