ルネ・コロ 7/7 さよならコンサート?

 2014年 7月 7日(月)18:45開演
 会場サントリーホール
 出演:ルネ・コロ(テノール)、井﨑正浩(指揮)、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団、小松英典(バリト ン)、白川佳子(ソプラノ)、蔵野蘭子(ソプラノ)、城守香(アルト) ナビゲーター:山形由美、加藤昌則
 第1部 生誕201年目のワーグナー
 歌劇さまよえるオランダ人より 
 序曲 (オケ)
 ゼンタのバラード (蔵野) 
 歌劇「ニュルンベルクのマイスタージンガーより 
 前奏曲 (オケ)
 マイスターたちをあなどらないで (小松)
 歌劇「タンホイザーより 
 第2幕の行進曲 (オケ)
 ローマ語り (R.コロ) 
 
■第2部 楽しきかなオペレッタ
 ジーンツィンスキー「ウィーン我が夢の街」 (蔵野)
 カールマンオペレッタ「伯爵家令嬢マリツァ」より
 序曲 (オケ)
 ウィーンへ愛をこめて (小松)
 ジプシーよ来たれ (R.コロ)
 スッペ:「ボッカチオ」より
 恋はやさし野辺の花よ (小松 城)
 ミレッカー;「ガスパローネ」より
 真紅の薔薇 (小松)
 ヨハン・シュトラウスこうもり」より
 第2幕序曲と合唱の部分 (オケ)
 僕はお客を招くのが好き (城)
 序曲 (オケ)
 マキシムへ行こう (R.コロ)
 ヴィリアの歌 (白川)
 唇は語らずとも (R.コロ&白川)

 ヨハン・シュトラウスオペレッタ「こうもり」より
 ぶどう酒の燃える流れに (R.コロ&全員) 
 
 
 ※ルネ・コロ!あまりに偉大な存在。
 想像を遥かに超えた「ローマ語り」 お世辞でもなんでもなく完璧なタンホイザー脱帽としか表現できない。
 紀尾井でのリサイタルを聴いた人なら誰もが感じたであろう年齢からくる不安が皆無、本当にびっくりしました。この曲が聴けただけで前後左右他の物質なんてどうでもいい気分。もしかしたら音楽鑑賞の積み重ねは今回の「ローマ語り」の数分間のために存在していたのかもしれない。
 
 
 書きたいことは色々あるのだけれど、さすがに草臥れたから寝ます・・細かな話は明日に続く・・
 以下が目覚めてから
 
 「朝は薔薇色に輝き」という訳にはいかず、ヴェーヌスベルクのような夢に魘され昼過ぎに起床した。
 昨夜の演奏会について心の整理。
 開演前にロビーで通訳のMさんに遭遇。
 M「Hさん、先日はゆっくりご挨拶できなくてごめんなさい。」と言葉にしてくださり恐縮してしまった。
 H「とんでもありません。ところでMさん、本当に今日の演奏会が最後なのでしょうか?」
 M「それがね、コロさんはそんな意識全くないみたい。」
 H「さよならコンサートと書いてありますが。」
 M「でもね歌える限り歌うと仰るの。・・今日は素晴らしい内容になると私は思っています。でもリハーサルで一度も声を出さないの。」
 H「・・応援しなければ。」
 M「伝えておきます。」
 
イメージ 1
 1階センター8列目17番、つまり歌手の真正面。通路から2つ右側で既に座っていらした紳士に「すいません。(ビッテ・ビッテ)」と隙間をすり抜け着席したのですが、数分後ここで驚愕の事実が判明。隣の紳士どこかで会ったことがある気がしてお顔を覗き込んだら、その昔ミュンヘンでお会いしたSさんかもしれない。勇気を出して声をかけたら、先方は「誰?」と当惑した表情だったけれど、「あー!一緒にバイエルンで聴いた堀内さん?!」
 ここ数日間こんな再会ばかりで頭がグラグラしてしまったが、記憶に間違いがなければ、当時お金も無いのに欧州初オペラハウス入館手続きにはタキシードと蝶ネクタイが必要と思い込み、わざわざ劇場の前でSさんに写真を撮ってもらったような気がする。その後何度か演奏会でお会いしたように思うのですが、個人的に女性の記憶が優先される脳の構造なので失礼ながら忘れていた。
 S「今でもドイツ行きまくっているんですか?」
 H「いいえ、そんなゆとり無いですよ。」 たまたま名刺が一枚あったのでお渡ししたら、帰宅後メールが下さって「今度飲みに行きましょう。」と嬉しいお誘い。しかしサントリーの隣席とは奇跡的な偶然。どうやらKolloなるキーワードに翻弄された個々の人生がこの数日間に幾つかの共時性を育んだようです。
 MCのお2人(山形由美さんと加藤昌則さん)が拍手の中登場。ワーグナーとはコロとは、台本読みながら丁寧なご説明。コロ以外興味の無い状況でチケットを購入したけれど、もしかしたら今回で10回目というイマジン七夕コンサートって「クラシック音楽って身近で楽しいものよ的」などうでもいい解説が不可欠なものなのかもしれない。話が長いと誰か可愛い子いないかな?とキョロキョロ周囲を見回す癖が僕にはあるが、2ヵ月後には同じようなMCしなければならないから(まだ何も考えていない)少し緊張感が伴った。しかし山形さんて本物初めて見た。
 井﨑正浩(指揮)の登場。いい仕事してくださった。(あの派手なポケットチーフはどこで売っているのだろう?)オケは東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
 歌劇さまよえるオランダ人より「序曲」 2つのことに吃驚した!
 ①1階席センターの音の良さ。普段からP席ばかりだから正面からの音に慣れていないともいう。
 ②オケが巧い!想定外なのは、素直に「シティPの皆様ごめんなさい。」先日の水戸より遥かに素晴らしいと僕には聴こえてしまったのですが、あとから野球帽のマエストロ小澤が聴衆に紛れ込んでいた事実に直面。どのようにお感じになったのか知りたくなった。「シティPは大リーグじゃないけれど、高校野球の準決勝のような感動が起こる。」とブロ友ぐら○さんが言葉にされていたと思い出した。シティPといえば個人的な過去の体験で、もの凄く低い可能性確率と理由が交じり合い、恐ろしく下手くそな板橋区民合唱による第9を我慢しながら聴いたことがある。オジサン集団がそのまんまの喉声で音程の狂った「ふろいで!」あれが俺のベートーヴェンを狂わせた。
 
 「ゼンタのバラード」ソプラノの蔵野蘭子さん、最初のうちはご緊張されていたのかな。でも新国とかで何度も聴いていて魅力的な歌手。彼女のゼスチュアを見ていると新劇とか、時代錯誤の蜷川演出を思い出してしまう。
 歌劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー前奏曲」素晴らしい!
 「マイスターたちをあなどらないで」 バリトンの小松英典さん。スタッフが用意した譜面台に興醒め。持ち歌じゃないのかもしれないけれど、この程度暗譜してほしいもの。ポッケから老眼鏡を出して読む雰囲気全開だから目を閉じて鑑賞。瞼を閉じればザックスを囲むニュルンベルク市民やマイスター達の姿が見えるようで、古のサヴァリッシュバイエルンの公演では歌手たちが演出意図を無視しながら、ザックスがワルターと書記官を和解させ(別の見方すればコロとプライとヴァイクルが「お疲れさん!」)笑顔で見つめるポップやモルやシュライヤーの姿が懐かしい。考えてみれば、あの名歌手陣のなかで一番大変だと思う守備範囲のコロだけが現在も歌っているとは不思議でならない。
 歌劇「タンホイザーから第2幕の行進曲」はマイスタージンガー同様に合唱が空耳となって心に入り込む。
 
 「ローマ語り」でコロの登場!
 紀尾井でも満足したけれど、モノが異なるから比較は不健全だけれど、あの2日間は何だったのだろう?と疑いたくなる声質に愕然とした。ローマ語りだけの時間に没入できる環境だから道理にかなっているけれど、冗談抜きでハンブルクやベルリン・ドイツの時よりも感動した。コロさんにタンホイザーが憑依。彼はヴェーヌスベルクを見つめていた。隣のSさん「全然衰えていないじゃない!凄いね。」(細かな話はどこかで専門家に委ねたい、ちょっと書く気力がなくなってきた。)まるでオペラが終わったような大騒ぎ。
 http://www.nicovideo.jp/watch/sm15416430 ニコニコ動画シェア これと同じような現象が昨夜起こった。
 結果的にチケット購入は正解だったけれど、ラッキーに思ったのは、企画自体が俗っぽい内容だから聴きに行くことを躊躇していた。「詩人の恋」の時に20年ぶりに会ったKさんが「俗こそコロさんよ。聴かずしてどうするの。」いかにもその通りだった。欧州で知り合った数名のご婦人方は「聴きたくない音楽が多すぎる」を理由に昨夜は辞退されたが、「ローマ語り」だけでも聴かせてあげたかったが素直な感想。
 休憩時間に友人STさん「驚いたね!やっぱりオペラ歌手なのだよ。」
 後半のオペレッタは純粋に楽しかった。
 コロさんも脱力できたのか、カールマンもレハールも楽々歌いこなした。
 18時45分開演だったけれど、お開きは21時30分。
 もう一人のSさんとYさんに再会。3日続けてのRさんと雑談しながら帰路に着いた。
 「じゃあ、マスタークラスで会いましょう。」って、そりゃ聴きたいけれど(まだ行くのか?!)「台風次第でしょうか。」と返答。
 
 動画サイトで長嶋さんと金田さんの始球式を見ながら、コロさんだってほぼ同じ年齢なのだな。
 信じられない時間だった。
 そしてSグールド、ボータ、フォークト他もろもろが霞んでいく。カウフマン?誰それ。