Parsifal

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 Amfortas: Eglis silins
 Gurnemanz: John Tomlinson
 Titurel: Hasegawa Akira
 Parsifal: Christian Franz
 Klingsor: Robert Bork
 Kundry: Evelyn Herlitzius
 Conductor: Iimori Taijiro
 Tokyo Philharmonic Orchestra
 Production: Harry Kupfer
 10月14日16時開演 新国立劇場 4階席1列目
 こんなに素晴らしいパルジファルが体験できるとは人生捨てたもんじゃないが、興奮のあまり寝付けなくなってしまい現在心身共に疲労の極限状態。広告代理店時代の友人が新国の会員を継続しているから一緒にチケットを予約してもらって隣席で鑑賞した。彼は今回3度も聴きに出かけていて、11日なんか朝から吉永小百合の映画と舞台挨拶を観てからパルジファルだったそうで、時々そういう元気な人がいるけれど何故健康な身体が維持できるのか不思議でならない。
 シーズンのオープニングだったから特別なのか?だけれど、バイロイトで主役を演じた経験のある3人(フランツ、トムリンソン、ヘルリツィウス)が特別来賓でもある皇太子殿下の御前で本気になり歌い演じた。自信と確信に満ちた芸術表現は間違いなく本物だった。それと書き忘れそうなので先に記すが飯守氏と東京フィル&新国合唱団も見事で、中には細かな駄目だしをする人もいるでしょうが、東京にいながらにしてこれ以上何を望む?音楽上におけるあら捜しは少なからず昨夜の公演に関してはイエローカードを提示したい。
 クプッファーの演出は電飾だらけでこういうことがやりたかったのだな(笑)そいつは五輪の開会式みたいに眩しくてチカチカだから2幕では半分目を閉じて聴いていた。それと舞台上の僧侶に「なんだこりゃ?」もしかして日本特有の宗教色を出すことでクンドリーの意義深き存在感を出したいとか考えていたとしたら、いかにも外人の考えそうな独特のダサさがあって、作品価値を壊していないからまあ悪くはないけれど、やることなすこと全てが古いと思われた。
 細かな部分では聖杯を握るアムフォルタスを積極的に見つめるパルジファルが常に何かを学んでいるように感じられて愚か者のようには見えなかった。そういえば1幕最後の字幕で「愚か」が適訳だと思われるが「馬鹿」表記だったので吹き出しそうになってしまった。正確には思い出せないけれど「お前はただの馬鹿・・」のような内容。逆説的にはあんな儀式を体験して「信じる・信じない」「理解・共感」できるほうが可笑しいでしょうからパルジファル以外の特に似たような動きだけを強要されているグラールの民全員が(蜷川演出とか昭和の新劇みたい)馬鹿なのではないかと思ってしまった。
 2幕の前半クリングゾルがやけに苦しんでいるように演じていて「これでいいのかな?」それと聖剣の影響もあるのかクンドリーとのシーンは絵的にワルキューレ魔の炎の音楽を思い出させたというか、そういう風にしか見えなかった。クンドリーの接吻に対してのパルジファルの「アムフォルタス!」が嘆きを含んだ表現で演出なのかフランツの哲学なのか理解できないけれど、印象として演歌みたいで(五木ひろしか森進一)困りました。
 3幕グルネマンツの「あなたを知っている」に対してパルジファルは笑顔で答えていたが、友達の再会じゃなにのだから真顔のままでいいのではないかと考えた。似たようなあれでグルネマンツの「白鳥を射落とした男を覚えているだろう?」にクンドリーが頷いた部分への違和感。夫婦じゃないのだからいちいち頷かなくていいのではないかしらん。
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 写真は完全にミーハー状態に陥った小生が楽屋口で出待ちしていたところ、世界のグルネマンツとクンドリーがポーズを取ってくださった。直ぐ近くにアムフォルタスのシリンスとクリングゾルのボークもいて気軽にサインに応じていたけれど(この2人は楽劇に相応しい美声の持ち主。シリンスに関しては来春東京でウォータンが聴ける。当面の生きる目標はワルキューレとします。)はっきり言ってヘルリツィウス最優先なもんだからトムリンソンでさえおまけのような感覚。そういえばトムリンソンがどこだかで「12月にトリスタンに出演する。」と言葉にしていた。
 そんなこんなでクンドリーからだけサインを頂戴した。だいたいの人はプログラムやロビーで売られていた写真を差し出していたけれど(DVDは僕だけだったみたい)いま「エレクトラ以外に何がある」と考えていてわざわざ金のペンと共に持参したのです。このDVDは来年3月サロネンと4月マイヤーの署名が追加されることでお宝として完成するのです。
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 16時に始まった音楽が終了したのは22時。
 楽屋口に押しかけたのが22時15分。20人くらいいたかな?
 皇太子殿下が我々に手を振り護衛の中乗車されたのが22時27分。
 トムリンソンが出てきたのが22時40分。(この段階で最終の新宿ライナーを諦めている。)
 ヘルリツィウスとハグしたのが22時50分。シェローとの間接的接触ともいう。
 23時10分新宿駅南口橋の上から暫く夜景を眺め、わざわざ山手線で品川駅経由か中央線東京駅経由が非常に面倒に思って、どこかバーに入るか朝まで東京を彷徨う選択もありだなと考えたけれど、無駄な出費もできないから帰宅を覚悟。気分的にいつもと違う小田急線で藤沢に向かう方法をチョイス。
 0時40分過ぎくらいに藤沢到着。意味もなく街を歩き雲に見え隠れする星々を眺める。
 ローソンでトルティーヤを購入。 
 1時24分タクシーで帰宅。
 猫たちの餌とトイレ掃除。
 シャワーを浴びる。
 メールをチェック。
 昼間仕込んでいた氷出し珈琲を飲む。
 神聖舞台祝祭劇の余韻に浸る。
 夜明け。