久しぶりの映画 佐々木昭一郎

 10月18日は誕生日。独り特別な時間を過ごしたい気持ちがあり仕事も細々した約束ごとも入れないようにしていた。それでもパートナーが食事をご馳走したいと提案してくれて前日17金曜は外食。
 青山のレストランや東京會舘等が候補だったけれど、最終的には僕の希望で茅ヶ崎の磯人なのだからコストパフォーマンスの低い男である。
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 刺身盛り合わせを前に冷酒。
 
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 その後、塩鯖焼き・白子の天麩羅・鯛の煮物と贅沢な時間。都内の高級フレンチも悪くないけれど、鮮度のいい魚以外に何がある?それに茅ヶ崎は我が故郷、意識は常に和食に導かれる。
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 そして18日。自宅周辺の名も無き花々を適当に摘み横浜に出動。目的はこの虚無な白亜の建物。
 ここはお墓。霊廟と表現したらいいかな。(いまのところ人生最大の買物)つまり両親の墓参り。お盆もお彼岸も忘れるくらいの親不孝な息子であるが、手を合わせることで一日を始めたいと考えたのです。野花を小さな鉢に入れてお水とコンビニで買ったパックのお酒。「親父煙草吸うか?でも2本だけ。あとは禁煙しろ。そのうち気が向いたらまた来る。」
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 その後観ておきたい映画があったので神保町岩波ホールに向かう。
 https://www.youtube.com/watch?v=r4QPst3A8ns ←目的は「ミンヨン倍音の法則」佐々木昭一郎監督作品。
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 実は佐々木昭一郎氏こそある意味自分の人生を決定づけた映像作家なのです。
 出会いはまだ僕が子供だったころ、たまたまテレビで放送されていた「四季ユートピアノ」
 この作品は国際エミー賞を受賞しているのだけれど(それがどの程度権威のあるものなのか全く理解していない世代)眠れないほどのショックを受けた。
 https://www.youtube.com/watch?v=CJkwGjgUg5w 貼り付けた動画サイトでは出だしの10分程度だけれど探せば続きも観られるはず。作品内でベートーヴェンピアノソナタマーラー4番の交響曲第1楽章が効果的に引用されている。 表現が大袈裟かもしれないけれど、個人的にはあらゆる映像作品の最高峰だと思っている。
 そして「川の流れはヴァイオリンの音」(芸術祭大賞) これをアンチドラマと揶揄した評論家がいたそうです。
 https://www.youtube.com/watch?v=Ml0r6W_-IZA ←全て鑑賞できます。これまたショックを受けた作品で、今思えば真剣に人生について考え始めるきっかけになった時期に符合している。なにもできないのに僕は色んな意味で早熟だった。
 
 
 今回の映画「ミンヨン倍音の法則」は巨匠25年ぶりの作品とのこと。
 好みの問題もあるので判断が難しいが「なにかに悩んでいるなら佐々木ワールドを覗いてほしい」とは思います。本物の映画とはこういう作品のことをいう。
 一箇所だけネタバレだけれど、映画の出だしのBGMはジュピターの第1楽章が唐突にしかも大きな音で鳴る。 衝撃的だった。感動しないほうがどうかしている。
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 岩波ホールを出てふらふらと小宮山書店のガレージセールに行ってみたら、お宝に遭遇。川端康成水上勉石川達三の帯付初版本が3冊で500円!なにかの間違いではないかな?勿論そのまんま購入した。
 地下のカフェ神田伯剌西爾で休憩。仏蘭西ブレンドの苦味が心地好かった。
 秋は夕暮れ。脳の中でリフレインする41番終楽章を追いかけるように駅に向かった。