クリストフ・プレガルディエン&ミヒャエル・ゲース ゲーテ歌曲の夕べ

 久しぶりにトッパンホールに出かけました。
 直前の予定の関係で飯田橋から歩いたら排気ガスの大通りが鬱陶しく音楽を聴こうとする気持ちに若干苦労した。プレガルディエンのゲーテ歌曲の夕べ(5.15)
 全席同金額の演奏会で小さなホールだからどこでもよかったけれど、チケットぴあで奇跡的に前から6列目のど真ん中を予約できてしまった。ほぼ満席「リート好きが世の中に500人もいるんだ・・」と感慨深い。
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 プログラムは以下。前半はシューベルト。後半は複数の作曲家。
 なかなかシャレたプログラムなのはD224の「さすらい人夜の歌」で始まりD768で終了するという詩的な展開。
 前列の女性はお疲れなのか途中から熟睡。隣の人は常に下を見ながら歌詞カードを読み続け鑑賞されていた。
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 素晴らしい演奏会だった。
 同時に幾つかのことを考えた。まずは馬鹿馬鹿しい話ですが
 「生きていてよかった」
 天から下りくる汝は多くの悩みや苦しみを癒し、人に倍の慰めをもっていたわる・・山の頂に安らぎがある。
 「意識の高揚」
 流れ行け忘却の大海原へ・・最近の自分の不甲斐無さというのか、そこそこ適当に過していたって明日も太陽は昇るもの・・逃げ出すのもよかろう・しかし何をしていても無駄・花々よ・安らぎ無し幸せ・汝の名は愛。
 「母国語で歌えるプレガルディエンへの嫉妬」
 美声を駆使しながらいちいち子音が美しく聞こえてくるし、なんというのか存在そのものがダンディーなのである。しかも退廃していない。・・急げクロノス!小石や切り株を飛越え・たとえつまずこうと・人生を突破する。
 「ピアノのゲースが実に巧みな技術」
 僕の好きなD259の方の「月に寄す」(An den Mond)では歌手がかなり旋律を揺らし、PとFも大胆に表現するのに、ごく自然に、もしかしたら誰にも作為的な部分をさとられずに時間を共有する。・・幸せとは世を隠棲し友を伴侶とする・小径を小夜更けて・彷徨い遊ぶ幸せ。
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 月に1度は上質な音楽を聴きたいと思い色々と模索し、時にオペラだったりオーケストラなのだけれど、どうやらドイツリートこそ自分が求めている世界だと気がつかされた。
 フライングの拍手等は一度もなかった。恐ろしいほどの静寂。「魔王」でさえ沈黙。
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 二人のマイスターにサインを頂き、五月の夜空と微かな風のなか飯田橋駅に向かいゆっくり歩いた。
 ・・お前が見たものは・全てが美しい。