ジェレミー・ロレールの演奏会

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2015年7月29日(水) 19:00 サントリーホール

 指揮=ジェレミー・ローレル
 ヴァイオリン=ヴェロニカ・エーベルレ

 メンデルスゾーン:付随音楽「真夏の夜の夢」序曲
 メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 作品64
 メンデルスゾーン交響曲 第4番 イ長調 作品90「イタリア」

 読響の表記ではローレル。僕のなかではロレール。(北千住が北干住・・)最近自宅では歌ものばかりですが、たまには国内オケの演奏会もいいものです。Pブロック6列6番で鑑賞。3,600円。
 今回が初来日とのことですが、かねてから気になっていた存在。1973年パリ生まれ、若い!
 つい先日エクサン・プロヴァンスの音楽祭で「後宮からの誘拐」を指揮、どこかの動画サイトで観れると思うのですが、バイロイト音楽祭も聴かなければならないからちょっと後回しにしていたら、あっというまに演奏会当日になってしまった。ちなみに所有しているCDはチマローザ「レクイエム」とソプラノ歌手ディアナ・ダムラウ「アリア集」 欲しいディスクはモーツァルト交響曲25・29番他、廃番で入手不可。PCで音源だけを手にいれることは可能なのですが、どうもそういうの苦手でCDというか形として存在しないと安心できない。その他個人的にラジオで幾つか録音したものはある。印象としてはオペラを中心とした歌の世界の住人だけれど、ロレールを意識しはじめたのはメンデルスゾーン5番の交響曲。hr交響楽団にゲスト出演したもので、まったくもって革命的な演奏じゃないのだけれど、大好きな「宗教改革」を頭の中で思い描いている理想のままに具現化してくれた最初の指揮者なもんだから、それだけで忘れがたい。
 宗教改革は有名なミュンシュ&ボストンやらクラウス・ペーター・フロールがバンベルクSを指揮したCDを持っているが(今の僕には皹だらけの無価値な骨董品で全然聴いていない。)ロレールのメンデルスゾーンこそ決定的なケミストリーだったのです。そして不思議なもんで願いは叶う。少しだけ俗っぽいけれど見事なオール・メンデルスゾーンプログラム!サントリーホールに集った人々の中で若きマエストロに一番期待していたのは間違いなく僕なのです。そうは申しましても世間は抽象的で曖昧な指揮者と評価するだろう程度のオーラ。そう簡単にロレールの良さは理解できないと思うが、この人のチケットは今後も簡単に予約できるような気がしなくもない。
 「真夏の夜の夢」・・真夏にこの音楽はぴったり。このまんまバレエが始まらないかなと思わせるほどに夢見心地・・管楽器がもの凄い間違いをするまでは。P席の比較的端っこだったのだけれどRA席の壁から特に金管の音が奇妙に反射して聞こえてくるから生々しさと同時にぶっ壊れたスピーカーの前に座っているみたい。
 「バイオリン協奏曲」・・ヴェロニカ・エーベルレという1988年生まれのドイツ女性、若い!
 かなりテンポや音量を揺らす奏者であまり好ましく感じられなかったけれど、面白かったのはロレールが普段オペラを指揮しているからか、合わせ方が非常に巧みで、しかもただの伴奏ではなく軽妙洒脱。終楽章なんかフランスのエスプリを感じさせる粋な表現だった。エーベルレはアンコールでバッハのアダージョらしき曲を美しく奏でた。ねっからの自由人なのか組織に属さない無伴奏で力を発揮するのかな。
 「イタリア」・・youtubeの5番同様に頭の中で理想と感じていた音楽がやってきた。聴きにきて良かった。
 いつまでも終わらなければいいのに。でもマエストロは躊躇することなくメンデルスゾーンを加速。 
 読響はロレールのマチエールに染まった。
 若さは武器。でも彼はそういう現実に無頓着?表白が難しいけれど、自分がいつの日か60歳や70歳になることに気がついていないのかもしれない。でもそれでいいと思う。考えるだけ無駄なこと。
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 20時40分頃に宴はお開き。
 定期会員の人だと思うけれど躊躇することなく席を立つ姿。皆急いでどこに行くのだろう。
 押しつけがましさと無縁な知性と才気に満ちた音楽は日中の猛暑を忘れさせる爽やかな夜風の中に溶け込み静かに消えていった。