5月17日すみだトリフォニー 知人の演奏会

 5月17日19時30分開演のすみだトリフォニー小ホール。
 つまりグリモーに挟まれた日程で昼間大切な打ち合わせがあったため間に合うか微妙でしたが、友人の舞台だったのでどうにかしたいと思い駆けつけた。実は肉体精神共に疲労の極限でしたが素敵な演奏会でした。
 写真を見ると3日間とも同じような場所に座ったのだな。でも全て異なるホールです。
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 出演者は昨年僕のナビゲーターで舞台をご一緒した3人。
 テノールの豊原奏さん、チェロの豊原さやかさん、ピアノの宇都宮三花さんでドイツ音楽の夕べ。
 以下がプログラムなのだけれど、直球勝負というか恐ろしいほどの(言い訳できない)名曲ばかり。
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 ホールにチケット預けてあったのですが、受付係りは以前「動物の謝肉祭」で共演させていただいた美人ピアニストMさんがお手伝いで「きゃー、こんばんは!」なんて展開は楽しかったのですが、今回全然関係ないのに開演前の楽屋にいるような奇妙な緊張感が襲ってきてどうにもこうにも落ち着かない。たぶん裏で3人はモニター確認しながら「まだ空席が目立つから5分押しで始めよう。」か、個々に楽譜と格闘しながら無言を貫いているかのどっちかだろうな。そして傍らには飲みかけの烏龍茶ペットボトル。恐ろしいことに全てが見える。
 
 さやかさんの無伴奏。さすがだと思ったのは全く緊張した雰囲気がないこと。ゆっくりと椅子に腰掛け間をとり長い沈黙の後バッハを奏で始めた。響きのある美しい音色。女性のチェロはかっこいい。聴きに来て良かったと思った。本人曰く「最初だからとても緊張したよ。」とのことでしたが、経験を重ね舞台に立ち続ける勇気こそ音楽と痛感した。それから印象に残った言葉としてバッハとベートーヴェンのチェロはバイブルみたいな存在で聖書の新訳と旧約になぞらえて表現されていた。僕はベートーヴェンも夢中になって聴いた。オケものでなければウェルカム。なんといっても楽聖なのだから。
 三花さんのソロ。彼女には内緒というか「昨日グリモーのブラームスを聴いた。」なんて言えるはずもないが、どんな音楽になるのか楽しみだった。そしたらステージ上でいきなりマイクを握り「人生の折り返し地点を過ぎてから暗譜が困難になってきました。その昔リストが楽譜無しで演奏。それを見ていたクララ・シューマンが素敵と思ったらしく、それから暗譜が徐々に主流になりました。・・だから私は苦労している・・」(会場爆笑)そして左手に持っていた楽譜をかざして「これは御守りなんです。」と言葉にし、御守りを見ないで演奏を始めた。思えば彼女のブラームスのソロを聴いたのは僕は今回初めてで、出会って10年くらい経過したかな?あの頃はリストのソナタとかだったけれど、良い意味で人生の転換期を迎えたのだな。ちょいと感動した。終演後「ブラームス素敵だったよ。」に「ウヒヒ・・ほんと~」って全然変わらない笑顔。

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 奏さんの「詩人の恋」五月に聴けるのは贅沢なこと。相変わらず明瞭な言葉。子音表現の美しさ。シューマンというより等身大のハイネを見出した印象。つまり朗読。たぶん作曲家も詩人はそうとうにクレイジーな性格で奇跡的に名作となったのだろうが、現在だったらストーカーなんとかで逮捕されてもおかしくないと感じた。
 アンコールは3人でブラームス「子守唄」
 テノール歌手とロビーでハイタッチ。「お疲れ様でした。好きなだけビールとワインを飲んでください。」 
 それとやるだけ無謀無意味だろうが自分でも歌いたくなった。たぶんバリトンと思われる僕には限りなくA音は不可能だろうと思いつつ、深夜帰宅して楽譜をながめてから睡眠薬を飲んだ。
 
 
 芸術は全て現場で開花する。

 短期間に沢山の演奏会やオペラを聴いたけれど、今後のチケットはもう手元にはない。
 しばらくは体調管理に留意しつつ時々自分の表現に磨きをかけたいけれど、僕はだらしない性格だから何もしないかもしれない。