ウィーン国立歌劇場「カーチャ・カバノヴァ」4/18

 おかしなウイルスに感染したのか、おう吐、下痢、発熱の数日間を過していました。
 思えば先週日曜日「ダウントン・アビー」頃に身体のだるさを感じ、でも眠れば治ると思い込んだのが間違いで、翌朝から気持ちが悪く、食欲がなく、関節が痛く、勇気も希望もなく、約30分おきにトイレの繰り返し、このまま死ぬのではないかと考えてしまった。
 直ぐに病院の予約を入れるも熱とは恐ろしいもんで「具合が悪くて伺えません」と意味不明な電話をしていて、むこうもどうかと思うのは「それはお大事に」だったような気がする。
 あれから一週間、いずれにしても駄目なりに回復してまいりました。
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 もう時間が経過しすぎて記憶も曖昧ですが、僕はウィーン最終日に「カーチャ・カバノヴァ」を鑑賞した。
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 今の自分に相応しい席はこの辺りかなと思えたのは、見やすく聞きやすいだけではなく、周囲は似たようなオペラ好きが多いような気がしてくるから。
 そしたら「konnichiwa.」と隣の年配ご夫妻。・・今回はどこに行ってもきちんと日本人と思われたみたいで、しかも誰もがフレンドリーに接してきてくださった。或いは普通にドイツ語で話しかけられ動揺することもしばしば。
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 指揮者はTomas Netopilという若い人で才能が有るのかよくわからないけれど、過去含めこれほどまでに脱力した演奏は初めてで、ホルンなんか何度も音をはずしておりました。これまたウィーンの特殊な日常。
 そういえばこれも2週間くらい前にyoutubeで全曲アップされ、少しだけ聴いてみれば明らかに良い演奏だったから別日の収録だと直ぐに理解できた。
 
Dirigent Tomáš Netopil
Regie André Engel
Bühne Nicky Rieti
Kostüme Chantal de La Coste
Licht André Diot
Susanne Auffermann
Dramaturgie Dominique Muller
Regiemitarbeit Ruth Orthmann
 
Dikoj Dan Paul Dumitrescu
Boris Misha Didyk
Kabanicha Jane Henschel
Tichon Leonardo Navarro
Katja Angela Denoke
Kudrjas Thomas Ebenstein
Varvara Margaret Plummer
Kuligin Marcus Pelz
Glasa Ilseyar Khayrullova
Feklusa Caroline Wenborne
 舞台はウエストサイドストーリーの読みかえみたいで、そこそこ裕福なユダヤ一族に嫁いだ移民のカーチャが孤独と虐めに耐えながら嫌々ながら生きている感じ。しかも義母役がもの凄く太っていて、カーチャのデノケは痩せているからそれだけで悲惨な雰囲気。考え方としては悪くない演出意図だけれど、互いのどのあたりに整合性があるのやら、考えることが馬鹿らしくなってしまった。
 ただ意に反して逆の感情(高揚する意識)もチラリとあって、はたして「マンハッタンのビル群が見える高台にヤナーチェクの音楽が相応しい」・・・普通そんなはずはないが、以前イヤホンで「ルル」を聴きながら夜の渋谷センター街を歩いていたとき、行き来する人々の表情と周囲の眩しい電飾が青騎士の絵画のような尖がった記号に姿を変えて脳に近づいてくる錯覚に襲われた。それは聴覚視覚分野でのプルースト効果?奇妙にも感動的な出来事として覚えていた。
 というのも前日深夜にテレビで映画007「ユア・アイズ・オンリー」が放送され、随分昔の作品だからリアルタイムに劇場ということはないが、シーナ・イーストンの歌をいつかどこかのタイミングで僕は聴いていて、曖昧な感覚だけれど<偶然鳴り出した音楽+ホテルからの虚無な景色+過去から繋がるややこしい現実=居心地のよさ。つまり最適な効率化>のようなもの。
 つまりヤナーチェクを通じて人生は美しいと感じた。しかも時に鳥肌が立つほどに官能的。
 ※上演そのものは、あまり気をはらずに鑑賞できたが、演奏も演出も面白くなく残念ながら特別な時間とはいえなかった。
 歌手に関しては、デノケだけがずば抜けた存在感で、他の人は悪くはないが・・あんなものでしょう。
 終演後楽屋口で歌姫に「日本に来てください。」と伝えるも、嬉しそうな困ったような中途半端な表情だったから可能性は0に近いように感じました。どうやらデノケは金銭やら名誉にあまり関心がないタイプに思えて、純粋に芸術が評価される場所で自分に適した歌のみで良いのかもしれません。チャンスがあれば今後リートを聴いてみたい。
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 実はこの日は朝から調子が良くて市内を散策。雨も止んでいたのでフォルクステアターからトラムに乗り終点まで行ってみた。目的を持たずに流れる景色を眺めるのも面白い。着いた駅は森みたいな大きな公園の入口で、あとから分かりましたが、プラターの遊園地のそのまた先の奥の場所。
 静かで素敵なところだと思いながら「どこかで見たことあるような?」・・間違いかもしれないけれど、「第三の男」のラストシーンでアリダ・ヴァリが歩いていた道はここかもしれない。
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 玩具のような線路。
 さらに進むと綺麗な池。
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 昼寝。
 この辺りに住みたい。
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 小さな駅があったので電車を待った。
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 プラターの遊園地に到着。
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 地下鉄でシュテファンに出てディグラスで昼食。
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 季節を感じたくアスパラガスのスープ。
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 サーモンはなんとマデラソース。この組み合わせは初めて。美味しくいただいた。
 その後、モカダブル。
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 では今回の旅で入手したお宝を公開いたします。
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 左上から時計回り。「メデア」のDVDに巨匠ボーダー。「レディーマクベス」のDVDにヴェントリス。「マクロプロス事件」のDVDとクルト・ヴァイルのCDにデノケ。R・シュトラウスのCDにシュテンメ。
 ヴァイルは前から聴いてみたいと思っていて、現地で購入しました。これ素晴らしいCDで、今度は楽譜が欲しくなってしまった。他は日本からサインをもらうためにわざわざ持参。小生はミーハーなのだ。
 そして最も高価なお買物・・
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 <銀の薔薇>
 女性のお土産にできたらかっこいいけれど、不可能な金額だったので自分のだけ。
 中途半端な薔薇を売っているお店もありましたが、本物でなければ意味がなく、デメルの向かいにある銀細工専門店で購入。
 クライバーの指揮台上に置かれていた印象が強くて、マエストロと同じようにあまり開いていない蕾に近いものをチョイス。
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 今年全ての舞台鑑賞をしたような気分ですが、そのうち耳が寂しくなれば何か聴きにいくと思います。