ミュンヘン その2 シュレーカー「烙印を押された人々」

最初の食事は市役所地下にあるラーツケラーと決めていました。
 20代前半の頃初めてミュンヘンを訪れたときの思い出のレストラン。
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 この季節はやはりシュパーゲル。
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 2年前ウィーンの名店?とは比較にならないみずみずしさ。僕は今までいったい何を食べていたのだろう?アスパラガスに似た違うものではないかと疑いたくなった。
 白ビールがまた美味しい。ハーブのような香りと深い味わい。サッ○ロとかサン○リーと比較するのもおかしいけれど、最後の一滴まで旨味が変化しない。喉ごしでどうと言うよりワインのように大切に扱いたくなる。
 昨今日本も地ビールがムーブメントですが、同じようなものが飲めるお店があったら誰か教えてください。

 街を散策すると、本当にビール好き種族とわかるのは酔っ払いだらけだから。
 でも新橋あたりのオヤジたちが上司の悪口等でストレスを発散している状態とは異なり、やたら明るいお酒。
 例えばオペレッタ「こうもり」2幕オウロフスキー公爵邸晩餐会でのアイゼンシュタインによるファルケ失敗談暴露に似ている。
 1:04:45から1分20秒程へルマン・プライ演じるアイゼンシュタインの爆笑話が続き、公爵のきっかけでシャンパンのコルクが音をたてる。そしてクライバーの世界。これが音楽だ!
 ミュンヘンヘルマン・プライだらけである。
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 ただし笑顔での乾杯は前を向いて歩ける生活者に限られるは他国と同じ。
 物乞いする人々。スリ。目の鋭い中東系の集団。特に中央駅の南側は危険地域で、麻薬中毒であろう人が徘徊。女性の一人歩きは危ないと思う。
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 シュレーカー歌劇「烙印を押された人々」 19.05 2018

 Franz Schreker „Die Gezeichneten
 以下のキャスト
 Herzog Antoniotto Adorno Tomasz Konieczny
 Graf Andrea Vitellozzo Tamare Christopher Maltman
 Lodovico Nardi Alastair Miles
 Carlotta Nardi Catherine Naglestad     
 Alviano Salvago John Daszak
 Guidobaldo Usodimare Manuel Günther
 Menaldo Negroni Kevin Conners
 Michelotto Cibo Sean Michael Plumb
 Gonsalvo Fieschi Andrea Borghini
 Julian Pinelli Peter Lobert
 Paolo Calvi Andreas Wolf
 Capitano di giustizia Tomasz Konieczny
 Ginevra Scotti Paula Iancic
 Martuccia Heike Grötzinger
 Pietro Dean Power
 Ein Jüngling Galeano Salas
 Dessen Freund Milan Siljanov
 Ein Mädchen Selene Zanetti
 1. Senator Ulrich Reß
 2. Senator Christian Rieger
 3. Senator Kristof Klorek
 Diener Milan Siljanov
 
 Musikalische Leitung Markus Stenz
 Inszenierung Krzysztof Warlikowski
 Bayerisches Staatsorchester Chor der Bayerischen Staatsoper 
 
 チケットは簡単に購入できていた。わりとよい席。
 話題の演出家はポーランド出身のクリストフ・ワルリコフスキ。
 指揮は読響や新日を振りにきているらしいが、個人的に初めてのマルクス・シュテンツ。
 このプロダクション初演のメッツマッハー指揮をラジオで聴いていて、音楽はあらかた頭に入っていましたが、動画に関しては実演を楽しまなければとyoutubeでも見ないようにしていました。
 https://www.youtube.com/watch?v=CXgHiwS-qzM ← 昨年のメッツマッハー全曲がありました。素晴らしい!
 シュレーカーの音楽はナチが「有害で退廃的である」と排除した。(ユダヤ系の家系)
 昔はかなり評価されていたらしいが、たぶん再演されるまで忘れられていた作曲家だと思う。かつて歌劇「遥かな響き」をゲルト・アルブレヒトの指揮で鑑賞したことがあるけれど、特に印象に残らなかったが正直な気持ち。
 人生二度目のシュレーカーだった。
 音楽的にはRシュトラウスシェーンベルクマーラーを同量ブレンドして、そこに無味無臭の人工デンプンと水を適量加え8で割ったような雰囲気。美しく毒っ気の無い世界。それなりに好ましいがシュレーカー命という人には会ったことはない。
 ちなみに指揮者のマルクス・シュテンツにも似たような感想を持っていて、初の実演だったからこれだけで判断できないけれど、ラジオで聴くとオランダ辺りで気どった音楽を披露している感じ。でもヘンツェとか良いと誰かの書き込みで読んだ記憶がある。でも素敵な演奏でした。
 オペラは日本では有名じゃないので、参考までに↓があらすじです。
 【16世紀ジェノヴァ。障害を持っている貴族アルヴィアーノは私財を投入しエリジウムという理想郷を作りました。しかし自分の醜さはエリジウムに相応しくないと考える。悪役タマーレ伯爵と貴族たちは娘たちをだましエリジウムの地下洞で乱行にふけっている。アルヴィアーノは市民にエリジウムを寄付しようとする。 貴族たちは所業が暴露されると不安になる。市長が娘で画家のカルロッタとともにやってくる。タマーレ伯爵はカルロッタに一目ぼれする。宴会を抜け出したカルロッタは、アルヴィアーノに対し絵のモデルとなるように頼む。 からかわれていると怒ったアルヴィアーノだが、真摯な願いであると承諾する。アドルノの裏工作でエリジウムの認可がおりない。タマーレはカルロッタをものにしたと考える。絵画が完成し、カルロッタはアルヴィアーノに愛を求める。アルヴィアーノはそれにこたえない。エリジウムに皆が招待される。人々がエリジウムの美しさに酔いしれている時、アドルノと警察隊が登場。 誘拐犯はアルヴィアーノだったと告げる。タマーレはカルロッタを誘拐し罪を被せようとした。アルヴィアーノは地下洞へ急ぎ横たわっているカルロッタを見つける。アルヴィアーノは怒りのあまりタマーレを刺し、カルロッタを助け起こすが、彼女はタマーレの名を呼びつつ息絶える。アルヴィアーノは正気を失いさ迷い歩くという、とんでもなく悲惨な物語】
 ワルリコフスキの演出は期待したほどではなかった。来年度は「サロメ」だとか。
 彼の尺度での「烙印を押された人」なのか、オープニングで主人公が頭から布を被りエレファントマンに見えたり、途中の動画でフランケンシュタイン美女と野獣、またファントム等が映し出され、意味合いは理解できるものの共感までは至らない。唐突にダビデの星が出現したときは嫌悪感を覚えた。それもまた虐げられし象徴でしょうか。箱に入った女性はハンス・ベルメールの模倣?他にもエゴン・シーレやベーコン等のヌードや頭部の絵画を想起させるシーンがありました。醜いとは世界共通認識なのかな。いい言葉ではない。そのうち死語になると思う。
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 カーテンコール。
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 John Daszak (ダスザックと読む?)素晴らしかった。
 美声かどうかではなく、歌手役者として劇場で出会う喜びは旅の醍醐味。