2018年ベストの舞台

 今年はトータルで月に1回程度の舞台鑑賞だったので選ぶことが恥ずかしい気分ですが、毎年聴きたい音楽会やオペラが減ってきていて、そこに代金の高騰が加われば、生き方の優先順位も自ずと変化するもの。

 ※毎月通っている病院(西荻窪、途中から市ヶ谷で合計14年)で処方される薬は28日分だけれど、ジェネリックでない場合は2週間に1度の期間もあって、冷静に振り返れば交通費だけで数10万円掛かっていたのだから恐ろしい。何度も欧州を行き来できていた計算。年明け、たぶん2月から自宅近くの病院に変更する予定。バスだけで通えるし、その気になれば徒歩も可能。またクリニック双方の承諾を得ているから問題ないが、変な担当医だったらどうしようが一番の悩み。

 ではベスト3ということで発表いたします。
 【3位】
 フランソワ=グザヴィエ・ロト指揮のレ・シエクル演奏会。
 https://blogs.yahoo.co.jp/junbunshi1/22130277.html  ←その時の感想文。
 
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 1位にしても良いような稀有な体験だった。ただ人間は過去を美化したがる性質を持っているので、慎重に考えた結果3位ということにしました。
 これまで実演で何度フランス音楽を聴いてきたかわからないけれど、それまでのはいったい何だったのやら。ロトの演奏スタイルに批判的な人も多いかもしれないけれど、繊細でありながら大胆な音の洪水は、釣れたばかりの魚が船上で暴れているみたい。「春の祭典」の音量は凄まじく、NHKホールなんかで聴いた経験は全く参考にならない。初台はウィーンのムジークフェラインがドライになったような響き。ホールの効果は大きいです。

 【2位】
  ヤナーチェク歌劇「死者の家」
 巨匠カストルフによる新演出初日。指揮シモーネ・ヤングバイエルン国立歌劇場
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←その時の感想。酷く疲れていて内容は滅茶苦茶。
 https://www.youtube.com/watch?v=PrPzg7Waml4  ←BRの参考動画。
 Musikalische Leitung  Simone Young                               
 Inszenierung  Frank Castorf    
           
 Aleksandr Petrovič Gorjančikov  Peter Rose
 Aljeja, ein junger Tartar  Evgeniya Sotnikova
 Luka (Filka Morozov, im Gefängnis unter dem Namen Luka Kuzmič)  Aleš Briscein
 Skuratov  Charles Workman
 Šiškov  Bo Skovhus
 Großer Sträfling / Sträfling mit dem Adler  Manuel Günther
 Kleiner Sträfling / Verbitterter Sträfling  Tim Kuypers
 Platzkommandant  Christian Rieger
 Der alte Sträfling  Ulrich Reß
 Čekunov  Johannes Kammler
 Betrunkener Sträfling   Galeano Salas
 Koch (Sträfling)  Boris Prýgl
 Schmied (Sträfling)  Alexander Milev
 Pope  Peter Lobert
 Dirne  Niamh O’Sullivan
 Don Juan (Brahmane)  Callum Thorpe
 Kedril / Schauspieler / Junger Sträfling  Matthew Grills
 Šapkin / Fröhlicher Sträfling  Kevin Conners
 Čerevin / Stimme aus der kirgisischen Steppe  Dean Power
 Wache  Long Long
 Bayerisches Staatsorchester
 Chor der Bayerischen Staatsoper
 
 同じことを書きますが、これが1位かもしれない。
 ヤナーチェク好きとしてカストルフ新演出を体験したかった思いが、ドイツへと肉体を飛翔させたが、この日僕は体調が酷くオペラを鑑賞するような精神状態ではなかった。それでも真剣に観てしまう性は確実に寿命を短くさせたと思う。ホテルへ戻るとき歩行が困難になってしまい(まっすぐ歩けない)翌日のフライトを考えただけで息苦しいほど心が追い込まれた。何度も壁にぶつかりながら「このまま死んでしまうのかな?」と初めて思った。
 ラストシーンで主人公が「悪霊にとりつかれたような現場」から開放される。喜びが伴うとドストエフスキーから学んでいたが、現場の存在こそ神聖であり、シャバで自由が保障されるか困難だけれど、前回のブログで引用したサルトルの抜粋や、カミユの不条理。今の自分には生きる価値がなく、そのまま「自由という刑に処されている」未来は暗闇に包まれた。
 もはやどうでもいい存在だが、この日をさかいにシモーネ・ヤングが嫌いになった。シャープに欠け下手するとだらだら聴こえる。現在BR?動画配信されている「英雄の生涯」も同じような印象。
 しかしカーテンコールでシモーネに大喝采・・カストルフに大ブーイング。軽蔑の眼差しをミュンヘンオペラ族に向けた。

 【1位】
 ドビュッシー歌劇「ペレアスとメリザンド」 指揮はミンコフスキ アンサンブル金沢
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 スタニスラス・ドゥ・バルベラック ペレアス(テノール
 キアラ・スケラート メリザンド(ソプラノ)
 アレクサンドル・ドゥハメル ゴロー(バリトン
 ジェローム・ヴァルニエ アルケル(バス)
 シルヴィ・ブルネ=グルッポーソ ジュヌヴィエーヴ(メゾソプラノ
 マエリ・ケレ イニョルド(アキテーヌ声楽アカデミー)
 ジャン=ヴァンサン・ブロ 医師、牧童
 ドビュッシー特別合唱団 合唱
 フィリップ・ベジア 演出
 フローレン・シオー 演出
 クレメンス・ペルノー 衣裳
 ニコラ・デスコトー 照明
 トマス・イスラエル 映像
 8月1日19時~東京オペラシティ・コンサートホール
 
 「死者の家」の後にロトの演奏会やウド・ツィンマーマン「白い薔薇」を鑑賞し、肉体精神共に抜け殻に近い状況だったけれど、やはり冷静になるほどに1位は「ペレアスとメリザンド」だった。
 何故ならば残酷な物語とミンコフスキの紡ぎだす音楽に酔い、幽体離脱初期段階を体験してしまったから。
 真面目に舞台上から椅子に座る自分が見えた。
 幻覚の一種だろうけれど、9月頭にブーレーズの「プリ・スロン・プリ」~マラルメの肖像で完全にそうなってしまったから、全てのきっかけはペレアスに関係していると思う。なんとも美しい世界。いつまでも聴いていたかった。

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総合的に下位にするしかないが、フォークトのローエングリンと、フローレスのドニゼッテイが体験できたのは財産になりました。
 
 すいませんが、書くのが限界に近づいてきました。

 今後は何を選び何を聴くか観るか、ただ素直に歩みを進めるしかできない。
 3月にカンブルランを2公演。なんだか紀尾井ホールが楽しみになってきた。
 
それで先ほど、東京・春・音楽祭の発売だったので1演目購入しました。
 イゴールレヴィットゴルトベルク変奏曲 BWV988」
 上野の春は名手のバッハで充分。大野さんの「グレの歌」も「オランダ人」もザイフェルト出演の「ガラコンサート」もパスします。
 「リゴレット」やシカゴ響・・もう今の僕には無理。聴きたくない。
 
 
 あと今月はルーベンス展とムンク展にたぶん行きます。