2018年度「ぐるぐる団」忘年会 少しだけ書き直しました。

 今年は皆のスケジュールが合わず「ハルコウさん、ぐらごるさん、そして私」の計3名だけの飲み会。
 小川町と御茶ノ水の中間地点にある個室つき鳥料理専門店をハルコウさんが苦労して探してくださり、12月25日つまり聖夜18時30分の開宴。
 僕は湘南ライナーで新宿に出て、素直に地下鉄に乗りかえればいいのに、地下鉄代金を余計に支払うことが嫌で水道橋下車。これが間違いでホームには溢れるほど女性ばかり。
 どうやら「嵐 コンサート 東京ドーム」だったみたいで、慌ててパニック障害の薬を飲み、駅から逃げ出すように神保町方面に歩き始めた。どうしてこんな面倒な経路だったかには理由があった。青森在住ピアノ調律職人友人から「SPレコードの針を買ってきて欲しい」と依頼されていたから。レコードを聴くだけではなく「仕事に使えるかもしれない」とのこと。
 そんなのネット購入でもなんでも良いとは少しだけ思うが、信頼のブランドは「レコード社本店」か「富士レコード社」できちんと物を確認して購入することが礼儀にかなっていると思うからです。
 200本で3,780円。高いのか安いのかわからないが、この段階で17時30分。まだ時間がある珈琲が飲みたい。
 お気に入りの「神田伯剌西爾」を訪問。
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 いつもの仏蘭西ブレンドを注文したら店長が「普通のサイズと同じ豆の量でデミタスとどちらがお好みですか?」 前まではそんな細かな対応はなかったのに、最近マニュアルに変更があったのだろう。
 「デミでお願いします。」これが美味しかった。
 店内は空いていて、孤独な空気を醸し出している若い女性が数人。クリスマスに悲しい出来事があったのかもしれない。一人はうつむいて涙を堪えているように見えた。「お嬢さん、お隣よろしいでしょうか?」とか語りかければどうにかなる妄想を抱きつつ、今日はぐるぐる団忘年会だから仕方がない。いきなり約束の2人に連絡して「近くまできたけれど、人生には様々な出会いがある。それが今来た。ゆえに2人でやってくれ。」とか言ったら、ぐらごるさんは確実に激怒するだろうな。
 18時10分会計を済ませて鳥料理屋に向う。駿台下の夜風は冷たく、三省堂書店入口に寂しげに置かれたサンタクロースのスノードームをちらりと眺めた。ウィーン製の売れ残りと思われた。
 スマホの地図で店の位置を確認しながら路地に入ると店がない。おかしいな?一つ路地を間違えたかと思い周囲を歩くもない。そしたらそこに同じようにスマホを持っているハルコウさんがいた。
 目の前にあるビルの地下が暗闇の螺旋階段で、彼はそこを指しながら「どうやらこの下みたいです。」外からだと滅茶苦茶危ない空気が漂っていたが、とりあえず地下に移動。そしたらわりとお洒落なお店が出現。
 店内に入ると飲み屋特有のざわざわした歓談の声が聞こえてくるが、スタッフが誰もいない。何度か「すいませ~ん!」と声をかけるも誰も出てこない。極端にホール人員が少ないみたい。そしたらドアを開けてぐらごるさん登場。しばらくして店員さんがやってきて小さな個室に案内された。
 「ご注文時はこのブザーをおしてください。」その後何度もブザーを押すもなかなか店員は来なくて、3~4回押してからやってくるを理解した。
 食べ物はぐらごるさんが一気に注文してくださり、そのまま「1年ぶりですね。乾杯!」
 どれも美味しく満足。汚い写真は自分の責任。
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 あとは食べることしか考えていなくて撮影を忘れ、最後の明太子雑炊のみ。
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 もちろん共通の趣味で出会った仲間ですから、今年の演奏会談義、ブログには書けないような評論?愚痴とも言う。毎回思うのは楽しい時間の経過は早く、23時まで飲み食いしておりました。
 しかしこの宴会は何年続いているのか?「いらないCDを持参して交換しましょう」とシンプルな企画を壊したのは僕で、というのも部屋中いらないCDだらけで、毎回大量にばらまき続け(たぶん数百枚)さすがに出品できる数も限られてきました。だから今回は半分以上が自分で録音したCDRでした。
 ぐらごるさん、ポゴレリッチとプレトニョフは僕の間違い。あまり興味がないのと似たような名前と変質性から頭がごちゃごちゃになったようです。
 そして収穫したCDはハルコウさんからのご提供で以下。
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 クリュイタンス指揮でゲッタが主役の「ホフマン物語」 
 エディット・マティスシューマン作品39の方の「リーダークライス&ブラームス歌曲集」 

 そしてコロがジークムントを歌っている「ワルキューレ1幕ライブ」指揮はテンシュテットでロンドンフィル。このCDは欲しいと思っていたのでお宝が増えた気持ち。ブントシューとトムリンソンとの共演。
 91年のライブで、当時ケンブリッジに留学していた友人女性がロイヤルオペラでハイティンク「リング」を全部鑑賞されていて、お土産にパンフレットをプレゼントしてくれた。(コロはもちろんジークフリート)記憶が曖昧だけれど、彼女がコロのジークムントも聴いたと言っていたから、もしやと思い本棚を物色したら、パンフレットが出てきた。懐かしいゲッツの演出。炎の中ジークフリートブリュンヒルデのもとへ歩みを進めるシーンが表紙。
 実はコロとロンドンのイメージが結びつかない印象があったのです。
 
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 「ワルキューレ」の日にモリスとジョーンズからサインまでもらってくれている。
 そしてリングサイクルと頂だいしたCDの日時を確認したところ、両方とも91年の10月で「ラインゴールド」と「ワルキューレ」の中間日にテンシュテットでロンドンフィルの「ワルキューレ1幕」演奏会形式が行われていたことがわかった。たぶん彼女が聴いたコロのジークムントとはこの録音のことなのだろう。
 翌朝CDを聴いたら、あまりの素晴らしさに驚いてしまった。テンシュテットワーグナー序曲類だけの演奏会は聴いたことがあるけれど、本当はオペラ指揮者としてワーグナーを求めていたのかと想像した。
 細かな制御のきいた温かい音楽。無駄な表現はない。つまり聴き手はワルキューレに導かれる。情熱的でありながら余計な主張をしないマエストロに感謝。何故とりつかれたようにマーラー中心に音楽活動の軸が動き出し、カラヤンの後継者候補とまで言われながら、現在では特別な印象を残せなかったのか、少し寂しさを覚える。

 しかし録音ものであってもコロのジークムントを聴いたことで、あの時代の様々な情景が思い出され、脳が少しばかり疲労を引き寄せたのか26日の昼間は完全にダウンしてしまった。
 実はNBSの企画で確か佐々木理事の生誕記念ガラでコロのワルキューレ1幕を部分的に聴いたが、声に若干の揺らぎがあったと思い出す。年齢による戦い。オペラでは声の変化に対応しながら役を選択していたはず。
 また先入観からジークムントは似合わないと考えていた。ところがワーグナーテナーに要求される時間配分は1時間出ずっぱりでも短い役柄だから、おそらくラストまでゆとりがあったのでしょう。最近の同役テナーが見せる不安は微塵もなかった。指輪物語の中で唯一の人間愛が力強く表現され、願わくは2幕まで聴いてみたかった。   コロにしても同じように死せる運命を意識しながらの歌唱だったと思われた。しかしコンサートは1幕完結のドラマ。数日後のジークフリートに向けビールでも飲みながら笑顔とちょいと脱力した適当な性格で意識を切りかえたのだろうな。
 そういえば笑える話ですが、ロイヤルオペラでコロが演じたピンかパンかポンを聴いた人がいた話を思い出した。想像しただけで爆笑である。
 似たようなそれで数年前にバイエルンオペラの「カルメン」で山路芳久さんが山賊を演じた記録を発見し、驚いたことにそれを観た人に出会ったことがある。その時は施設に入られる前の山路母上が津市のご自宅で元気にしていらして電話報告。
 「えっ~芳久が山賊!似合わんな。」・・「ご存じなかったですか?」・・「男の子やから何も話さんからね。」
 そのことが気になり、ミュンヘンに出向いたときにオペラグッズ売場で過去のパンフレットを必死に探したら、当時の「カルメン」のパンフレット在庫を一冊発見。祈るような気持ちで「メンバー表挟まっていてくれ!」・・しかし無かった。しばし買うか買うまいか考えたけれどやめた。バイエルンオペラからPCで情報提供してくださった書類の存在で充分と思ったのです。しかし諦めの悪い性格は日々youtubeで隠し録り音源を探し続けている。
 つい1ヶ月ほど前にウィーン「椿姫」ガストンの過去の新しい隠し録り(変んな言葉だな。)を見つけて、しかし当時のキャスト表と照らし合わせようと試みれば主役級以外誰が演じたか不明となっている。でも1幕「乾杯の歌」前のテナーは基本アルフレードとガストンだけだから、主役と比較すれば間違いなく山路さんのガストンと確信。
 精神科での幾つかのテストで、言語と聴力に異常に高い数値が認められ、それが病の因果関係と結びついている可能性大だったから、良いのか悪いのかそういう脳の機能が働いているよう。
 とにかく慌てて情報を山路氏姪のNさんにメール。そしたら「凄い!間違いなく叔父の声です。今度は私が何か探す番ですね。」と返信をいただいた。
 ちなみに、この日はヴィオレッタ:エディタ・グルベローヴァアルフレードホセ・カレーラス、ジェルモン:ベルント・ヴァイクル。驚きのキャスティング。 
 話がづれたけれど、注意深く生きていればそういうこともある。
 生きるとは発見と忘却を繰り返す。

 音楽好きとの集まりは毎回のようにチャンスを掴み取ることができる気がしてならない。