グレの歌 シルヴァン・カンブルラン/読売日本交響楽団 3月14日

 演奏会前に新宿ディスクユニオンに電話して「アッシジの聖フランチェスコ」のCDの在庫状況を確認したら「1枚だけ3千円代であります。」ということだったので、買いに出かけた。紀伊國屋書店の8階にお店が移動したというが、驚いたことに左右のビルが消滅していた。イメージ 1
 1階の煙草屋で1,500円分の巻き煙草(半月分)を購入。
 店員が「アニキはいつもこれですか?」→「気分しだい。毒っ気のあるのなら何でもいい。」→「これからどちらへ?」→「煙草買ったら珈琲屋に決まっているだろう。」→「かっこいいな~」
 但馬珈琲の2階カウンターに移動して「マンデリンを濃い目で。」そしたらやけに丁寧に煎れてくれる従業員。「アニキ、味は大丈夫ですか?」→「ありがとう。美味しいよ。」→「良かったです。」→「ご馳走様。」→「アニキこのあとは?」→「デンマークの伝説の中へ。」
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 なんでアニキなのかなと疑問を感じつつ、茶髪ロン毛パーマに黒いサングラスとレザージャケットだからかなと気がついた。老舗ホテルや高級レストランから仕事をいただいていた月日は完全に過去のものになったと感じた。
 髪型に関しては当初ボブ・デュランを目指していたが、途中からロバート・プラント。現在はペーター・ホフマンを目標にしている。
 地下鉄に乗り溜池山王に向う。人が多すぎて気が狂いそうになった。
 何とか目的地に到着。
 サントリーホールのポスターを見ながらカンブルランみたいに髪の毛を後ろで縛れるなと思ったが、それでバンダナでもしたら、鎌倉あたりでオカリナを吹く馬鹿なカフェのオーナーみたいに一気に変貌するかもしれないと恐怖を感じる。
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 そう、これからシェーンベルクを聴くのです。
 
 ロバート・ディーン・スミス(T:ヴァルデマル)
レイチェル・ニコルズ(S:トーヴェ)
クラウディア・マーンケ(Ms:森鳩)
ディートリヒ・ヘンシェル(Br:農夫・語り)
ユルゲン・ザッヒャー(T:道化師クラウス)
合唱:新国立劇場合唱団(合唱指揮:三澤洋史)
指揮:シルヴァン・カンブルラン/読売日本交響楽団


 デンマークの作家イェンス・ペーター・ヤコブセン(1847-1885)詩集内の「サボテンの花ひらく」に「グアアの歌」「アラベスク」と「気分」、巻末には「グレの歌のために」(デンマーク中世の伝説に基づく)ロベルト・フランツ・アーノルトがドイツ語初訳として1897年に発行。アーノルトは2年後の1899年に改定した「ヤコブセン全集」を発表しているものの「グレの歌」と差異が生じているので、初訳家と議論があったか?は想像だけれど、ドイツ語初訳をシェーンベルクが採用したらしい。らしいというのは100年以上前の細かな出来事なんか知っているわけない。

 お話の内容は単純なもの。難しく考える必要はない。
 第1部 デンマーク王ヴォルデマルがグレにある狩猟用の城で侍従のトーヴェと不倫している。それを嫉妬した王妃に謀られトーヴェは毒殺される。山鳩は「トーヴェは沈黙している」と言葉にする。(1時間位かな)
 第2部 ヴォルデマルは怒り狂い神を呪う。そのかどで命を失い死者の霊となった国王は毎夜グレの城近辺を狩りをしながら彷徨う。(2部は短く数分)
 第3部 ヴォルデマルを見かけた農夫はびびって「3本の十字架を作らなきゃ。」家来たちは「最後の審判まで狩りは続く」と叫ぶ。ヴォルデマルはトーヴェの名を繰り返し2人の魂は結びつく。霊と共に狩りを続けさせられている道化師クラウスの心情。そして最後の審判。命の救済が暗示され輝く太陽が朝の到来を告げる。(50分位?)
 色分けは分かりやすさというより、個人的に色彩の共感覚みたいなものがあって「青の時間」やら・・現実世界の人間も色彩で判断することが多く、ハルコウさんはモスグリーン、とむさんはイエロー、MFさんはエンジ、nemoさんはホワイト、ぐらごるさんはベージュ、あすかさんはオレンジ・・
 
 席は1階の17列目右側。毎度のことですがオケの練習が煩いのでロビーのベンチでギリギリまで過す。
  
 今回の演奏を世間はどう感じたのか興味もないが、僕には非常に贅沢な時間だった。細かなことを言い出すと音楽的な駄目出しや、他者との比較に終始するのだろうけれど「一期一会」の体験に専門家みたいに神経質になる必要もない。
 そんなことより「君はグレの城を見たか?」である。
 ちょっとだけ指摘するなら「君たちはゴールのないマラソンをしているのか!全力で走れ!あのアッシジは奇跡だったのか?光を感じろ。」である。
 それとどこかで誰かが否定する可能性があるから、ディーン・スミスは擁護させていただきたい。出だしの音程がなんのその、声がオケに掻き消されようが奴は耐えた(笑)ハンセンのラリアットを受けても立ち上がる馬場の如し。しかも独り暗譜。   
 ヴェールゼ!!で全ての力を使い果たしたジークムントが懐かしいけれど、年齢を重ねてなお歌い続ける素晴らしさ。

 ただ音楽以外で気になる出来事に遭遇し暴れたくなったのは第1部の前半。
 休止符が訪れるたびに左側からの微かな機械的ノイズ。
 モスキート音のようなそうでないような、音の方角を確認したらテレビカメラが2台。あれかな?途中から音楽が肥大化していくので全く気にならなくなったが、とりあえず終演後事務局に伝えた。クレーマーな生き方はしていないけれど、「補聴器のノイズでは?」とか「他の人から言われていない」とか、挙句の果てには「カメラが原因だとしたら読売テレビの管轄なので」といい訳ばかりしてくるから、腹立たしく感じてきた。読売テレビ読売日本交響楽団と異なる企業だとしても、まず「謙虚に受け止め原因を追究し報告する。」が正しい解答と思う。連絡先は伝えたが、まだ何も言ってこない。
 それで昨日調べてみたら16000~17000Hz程度の揺らぎに似ている。普通は聞こえてこない年齢なのですが・・不安・・もしかしたら遂に頭が狂いだしたのかもしれない。元々音と言葉に神経質な自覚はあったけれど、演奏会鑑賞に堪えられない病的な原因だったとしたら、もう人生終わったようなもので「あなた方には感じられないのですか、溺れ、沈み、意識無き、至上の快楽よ」by.イゾルデ。
 
 それともサントリーホールの響きの影響かな?
 3部でワーグナーチューバが後ろから聞こえてきたような奇妙な反響。
 改装してから絶対に音が変化していると確信を持った。

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 マエストロへの喝采は感謝の証。
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 楽屋口でサインに応じるスミス。
 あなたは生まれた国を間違えた。
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 マエストロ・カンブルラン。
 震災後直ぐに日本に来てくれた。パンフのインタヴュー読みながらモルティエへの感謝を言葉にしていた。涙出そう。
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「MFさん、ゴールドのペン貸してください。」
 しかし急にインクが出なくなり慌てて鞄からボールペン出す私。
 「鳥の上に書いてください。」

 ※ハルコウさんを探すも発見できず。
 MFさん、また来週。火曜に紀尾井で。