The鍵Key 作曲・演出:フランチェスカ・レロイ 原作:谷崎

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 <The鍵Key> 作曲・演出:フランチェスカ・レロイ 原作:谷崎潤一郎
 鶯谷から徒歩数分。会場は旧平櫛田中邸。普段入れない場所ですから貴重な経験だったかもしれません。観客は満席30数名。

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 開演15分前に到着。スタッフが「今日はお暑いですからよろしければご使用ください。」と団扇を配ってくださった。小生金魚の団扇を選びました。イメージ 3
 夫、妻、娘、娘の婚約者木村が各々4つの部屋で歌い語り演じる。
 観客は自由に回遊し観賞する形式。右上の妻の部屋だけが2階。イメージ 4
 長年の連れ添った夫婦の満たされない性生活。娘の婚約者に対して気にかける仕草をする妻に夫は嫉妬。その嫉妬心に性的興奮を覚え心は満たされていく。その思いを日記にしたため、妻にそれを読むように画策する。妻も読まれることを前提に同じ行動をとる。娘と木村も両親の意図を知り協力する。・・その個々の思いがそれぞれの部屋で表現され、我々は夫の部屋から「次は妻を見よう」とか「娘の部屋を覗こう」とかバラバラに動き始めるという展開。音楽は武満氏のような雰囲気でストーリーを邪魔せず好ましい。若干の違和感を覚えたのは「言葉=歌」なのですが、日本語のあとに英語でリフレインされるところ。分かりやすい英語だったので、翻訳的繰り返しが鬱陶しく思われた。日本語か英語のどちらかでいいと。でもやはり日本語でと感じたのは、「いとなみ」が「セックスライフ」になってしまうストレス。これでは谷崎ではない。キャストの動きはクロード・レジ演出のスローモーションのよう。木村の踊り?だけ時々寺山修二氏の影響かと勝手に想像した。(ちと古い)
 しかし、今回出かけたのは妻役が知人だったからが大きな理由なのですが、彼女は足袋を脱ぎ素足を見せながら横になり「うふん」とか言うから、見てはいけないドメスティックな部分に入り込んだようで、どうにもこうにも具合が悪かった。というのも舞台ではなく6畳程度の同じ部屋での目の前の演技なので、興奮はしないけれど、現実問題どのような生活をしているのか(例えば昨夜は焼魚定食で「あなたご飯おかわりは大丈夫」とか)全部見えてくる幻覚に魘された印象。終演後「あらHさん、毎回髪型が違うからわからなかった。」そこでようやく舞台の緊張感が切れたように思えたけれど、気がつかれなかったということは、僕は「覗き」していたのだなと奇妙な気分になった。
 アフタートークで発言「聴衆側の親密性。狭い通路を徘徊する連帯感。面白かった。」と伝えた。
 作曲・演出:フランチェスカ・レロイさん。魅力的な女性に思えた。日本的なのです。
 暑い五月の湿度を含んだちょっとした恋心だったかもしれない。
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