アラウ グリーグ・シューマン協奏曲 レコード②
市内にブックオフがありまして、と申しましても藤沢との境で交通量の多い賑やかで鎌倉らしからぬ場所。
このタイプの古書店には欲しい本が全くといっていいくらい無くて、前に黒田清輝と岡田三郎助の画集を買った程度ですが、先日ダンボールに無造作に入れられた大量のレコードを見つけまして、サインペンで「一枚100円」と書いてあるものだから、思わず足を止めた。
子供の頃からレコードが売られていたら確認しないではいられない性みたいな感覚が神経に染み付いていて、殆ど犬の条件反射と同じなのですが、ピンクレディやらアメリカのB級映画LDに紛れて5枚のお宝がありました。
全部で500円なのだから、安い。
なかでもアラウはモノラル時代のフィリップス重量盤で、ドホナー二がコンセルトヘボウを指揮しているグリーグとシューマンの協奏曲、御茶ノ水あたりの専門店なら数万で売られていてもおかしくない臭いがいたします。
その昔鎌倉にクラシック音楽と美しき奥様をこよなく愛する紳士がいた。
皇族と血縁関係にあり、移動なさる時は常に馬車。「大切なのは優しさだよ」が口癖。
この辺りで想像は止めておきますが、このレコードは恐らく本人ではなく、遺族が売ったのでしょう。
勝手に殺してしまいましたが、以前の所有者は無類の音楽好きで優しく夢見る人だったと私は思います。
そうでなければ、アラウのシューマンなど聴いたりしない。
そんな気がいたします。
レコードには若干の傷、一楽章で軽く音跳びがあり、これもまた年代物の証明で優雅な緊張の瞬間、人生誰にだって音跳びはある、細かなことは気にしても仕方ないとでも言っているみたい。
戸惑う程に遅めのテンポ、技巧鼻につかず自由闊達、少しだけ気取った演奏、輪郭がはっきりしていて、それでいて音の響きは内向的、純粋でダンディーな音楽。