結婚披露宴列席とサロネン非正規盤

 もう10日くらい経っているけれど結婚披露宴に出席してまいりました。
 私にとって司会を頼まれない純粋列席は珍しい出来事で、ただ呑んで食べてお祝いする当たり前の形がとても新鮮でした。
 あくまで個人的なお祝いだしブログに書くつもりもなかったのですが、ネットを見ていると披露宴の様子があちこちで出てくるのだから、今回は公の祝福と捉えていいみたい。
 新郎は、現在「レ・ミゼラブル」「ミス・サイゴン」等、東宝ミュージカルの歌唱指導をされている船橋研二さんで、これまで何回もご本人主催の舞台司会をさせていただき、以前は歌も習った先生で、食事も何度もご馳走になったり、そういう関係。
 既に来年の司会依頼がひとつありまして、6月末の予定。
 しかし何処で探してきたのか24才も年下のモデルさんしている若き美人奥様なのだから、「こういう出会いもあるのだな。」といたく関心いたしました。
 随分と有名な芸能関係者が何人も列席されていて賑やか、私は久しぶりにお会いした方々と会話が弾み楽しい時間を過ごしました。
 「船橋さんおめでとうございます。奥様を大切に。これからは絶対に呑みすぎないで早めにご帰宅なさってください。末永くお幸せに!」
 さて、オークションで落札したサロネン指揮フランス国立管の「ブルックナー交響曲6番」CDRが届きました。
 なんとサロネンが26才の時にヨッフムの代役でタクトを握ったという貴重なライヴ録音でして、所謂完全なる海賊盤なのだから公にできない後ろめたさがあるけれど、これがびっくりするくらいの凄い演奏でして、もう公も私もこの際どうでもいい気分。
 全体にクール?なんて、どこかで誰かが書いていましたが、私の感想は少し違う。
 違和感は無いけれど兎に角速い。
 時に猛り狂ったような眩く敏捷性のある内容で、最近はヴァントのCDばかり聴いていて曲の的確な速度があるのなら何を基準にしたらいいのか混乱しているけれど、サロネンは淡白ながら心強い確信に満ちたリズムを刻み誘惑的な情熱を発散、若者特有の活力を武器にしている。
 つまり単純な話、精力絶倫なのだ。
 世界のあらゆる巨匠がどのように6番と対峙してきたのか全部聴くだけの精力は私には無いけれど、サロネンには6番でなければならなかったように感じられてきた。
 車に例えるなら疾走するF1みたいで気分爽快。
 だから元々この日にクラシックカーみたいなヨッフムはたぶん別の曲を演奏するつもりで、想像にすぎないけれど時間の問題とポピュラーである理由から3番か9番あたりかなと、勝手に考えた。(真相は知らない)
 それからもうひとつ、この人がどうしても作曲家であるなと感じられるのは、先に記した創造的なリズムとやはり速度設定に集約される。
 サロネンの音楽は、クナッパーツブッシュなんかが作り出してきた過去のブルックナー形態を無視し、時間をかけて積み上げられた歴史的建造物ではなく、契約計画どおりに建築されたガラス張りの現代ビルディングを想起させる。
 つまり伝統的ドイツ音楽というより、感覚的にブーレーズシュトックハウゼンを聴いたり哲学書を読んだりした時の印象に近く、思えばブルックナーのしつこいくらいの反復はライヒ等のミニマルの原型なのではないかとイメージしてしまうくらい。
 それでいて虚無ではなく、昨晩の美しき満月の輝きのように美的霊妙に反響する。
 秋のウィーンフィルでの同曲がどのような円熟のエッセンスが加わるのか楽しみ。