サイトウキネン演奏会
9月5日 16時開演 サイトウキネンオーケストラ
20分間の休憩時間
長野県松本文化会館 1階23列53番にて鑑賞。
開演前に万来の拍手のなか小澤征爾がマイクを握りステージ上に姿を見せ、ご挨拶と今回のプログラムと指揮者の変更についてお詫びを言葉にされた。
癌は完治したが、以前から抱えていた腰の痛みが酷く5分と歩けない立っていられない。
今後、他の仕事はキャンセルし治療に励み、来年のサイトウキネンでは最後まで舞台に立つ事を約束したいとのこと。
まずチャイコフスキー、大人数の弦楽メンバーでほぼ全員が参加したみたい。
マエストロは思っていたより元気でそうで、力の入った、そして細部にまで配慮の行き届いた指揮は昔と基本何も変わらず、短いからご本人としても全力投球しなければとの思いもあったのでしょうか、もう少し気持ちを抜いて音楽に向かってもいいのではないかと感じてしまったくらい。
全曲なら健康な人でも最後まで辿り着けない迫力、それでも一楽章だけだから、仮に5キロで終わるマラソンなら全力で飛ばしても大丈夫なように、当然のことながらロシアの流麗な叙情性やらメランコリー等を二の次にし、他に類を見ない情熱的な独立したアリアとして表現した印象。
涙を流して聴いている人もいたくらいで、 私はそこまで行き着けなかったけれど流石に鳥肌が立つくらいの奇妙な感動があり、誰もが知っている僅か数分のこの曲がいつまでも終わらなければいいのにと願ったほど。
続いて武満の名曲、下野さんの登場。
音の構造として11の段で形成され、ニューヨークでの小澤の初演が11月だったから「ノヴェンバー・・・」であると聴いたことがあるが、ラテン語では元々9番目の月を表すのだから偶然にもリンクした。
現存する日本最古の五重天守、松本城の天守築造年代が文禄2年から3年(1593・1594)、天守の語源はDeusラテン語でデウス・ギリシア語でのゼウスつまり神を表す言葉の可能性があるとGさんから伺い、これは司馬遼太郎も書いているそうだが、調べてみるとF・ザビエルが来日したのが1549年であり、「大日ではなくデウスを拝みなさい」と布教(大日とは大日如来に由来しザビエル来日前の定説)、安土城が1579年だから、確かに天守閣の誕生とゼウスは関係ありそうで、単純な私はそれだけでワクワクする。
天守閣まで頑張って登り、頑張ってというのは途中もの凄い階段が一つあり、あれは階段というより梯子のように急で特に降りる時が怖いくらいでしたが、それでも天主から眺めたアルプスの山々は美しく、運がいいことに先端だけが飛び出した槍ヶ岳を見つけることができた。
校訓は「愛 正 剛」とあった。
話が脱線しかかりましたが、上記の下地を吸収した上で西洋楽器と和の融合である武満徹が聴けたのは非常に贅沢な経験であり、正直私はラッキーだったと思う。
西欧の曲はどれもこれも劇的なクライマックスを追い求める傾向が多いが、尺八と琵琶の音色は大きなホールで静かにそれでも豊かに響き、始まりも終わりも無いような、意識が拡散するようにクールダウンする。
下野さんの指揮は大袈裟な主張はせずに楽器の一つになったように作品に溶け込んでいた。
この日のプログラムの全部が武満でもよかったと思うくらい居心地がよく、また張り詰めた緊張感に酔いしれた。
驚くほどに遅いテンポで始まり指揮者が変に緊張しているのかなと不謹慎な感想を持つ。
でもそれが起承転結、音楽上の狙いであると直に理解できたが、特に感動も無いまま音楽だけが進んでいく印象で、CDを聴いているみたい。
NHKのカメラが入っていたのでそのうち誰でも確認できると思いますが、今更だけれどミスの無いとても上手いオーケストラで、昔の斎藤秀雄が桐朋のオケを正確な音とテンポだけでモーツァルトかなんかを演奏している映像を見たことがあるけれど、あれがサウンドの礎なら師の教えがそのまま生かされているのでしょうが、まるで機械が演奏しているみたいだなと思うくらい無機質な瞬間もたびたび訪れる。
舞踏会のシーンは遊び心の無いワルツの刻み方で面白くなく、言葉は悪いが、もの凄く上手いオケを勉強だけができる優等生が指揮している感じがしてきて、私はこの辺りから退屈になってきた。
それでも下野さんは一生懸命だから応援したいのだけれど、驚かされるのは「f」の時の音の大きさだったり、コーダでのスピード感のあるテンポだったりと、果たして音楽と別の次元での心の動きなのだから、でも仕方が無いのかな。
演奏後は大きな拍手と歓声に包まれていた。
以上がおおまかな感想であるが、音楽以外の部分でこの演奏会は大きな問題があったので報告したい。
それは客層の悪さである。
ノヴェンバー・ステップスで鼾をかき寝ている紳士は私の左隣。
(寝るのはいいけれどイビキかくな!)
「指揮者背が低いのね。でもなんで尺八がいるの」なんて話している夫婦らしき年配の2人は、私の後ろの席。
(身長なんかどうでもいい。勉強して来い。知らないなら静かにしていて。)
ラストのところで携帯電話のバイブがブンブン鳴り出したのは私の斜め前の方。
(お願い・・電源を・・・切ってく・・れ!)
休憩時間に主催者デスクにその状況を伝えに私は行き、「せめて携帯の電源を切るようにアナウンスをいれてください。」と伝え、丁寧に応対してくれましたが、結果何もしてくれないまま後半が始まった。
最悪の出来事は「断頭台への行進」のおしまいの方でで訪れた。
いつまでも止まらないアラーム音!テレビ録音に入っているのではないかな?
(私の3メートルくらい横の席からだ。断頭台に送り込め!)
皆様この状況どう思いますか。
たまたま不運だったのでしょうか?
このストレスを小澤さんに伝えたい。
今日は書くのが大変でした。
随分時間かかりました。